TOHOKU UNIVERSITY LIBRARY 東北大学附属図書館

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東北大学附属図書館における福島県沖地震(2022年)対応記録

2022年03月25日掲載
2023年03月27日更新

2022年3月16日(水)23時36分頃、福島県沖を震源とする地震(M7.4)が発生し、本学の所在地である仙台市青葉区は震度5強を記録しました(最大震度6強)。 〔参照:日本気象協会 地震情報
この地震による附属図書館(本館・各分館)の被害とその対応状況についてご報告いたします。

更新情報(2022年5月16日)
 ・「2.対応状況」を2022年3月24日時点から5月13日時点に更新しました。
 ・「3.これまでの書籍落下防止対策と今回の状況」「4.学生ボランティアの協力」を追加しました。
 ・【関連サイト等】に追記しました。
更新情報(2022年5月19日)
 ・「5.「図書館のみらい基金」へのご寄附」を追加しました。
更新情報(2022年6月14日)
 ・「2.対応状況」を2022年5月13日時点から6月13日時点に更新しました。
更新情報(2022年7月25日)
 ・「4.学生ボランティアの協力」と「5.「図書館のみらい基金」へのご寄附」を更新しました。
更新情報(2022年8月29日)
 ・「4.学生ボランティアの協力」 を更新しました。
更新情報(2022年10月11日)
 ・「2.対応状況」を2022年6月13日時点から10月11日時点に更新しました。
更新情報(2023年3月27日)
 ・「5.『図書館のみらい基金』へのご寄付」を更新しました。
 ・「6.助成金による対策」を追加しました。

1.被害状況

館名 (1) 書籍の落下 (2) 施設 (3) 設備
本館    157,000冊
(図書   22,000冊
 製本雑誌 85,000冊
 古典資料 50,000冊)
・天井からの漏水
・屋上冷却塔囲い壁破損
・壁の亀裂
・空調機の使用停止(配管破損)
・屋上クーリングタワー破損(配管ずれ、配管支え転倒)
医学分館     60,000冊
(図書   30,000冊
 製本雑誌 30,000冊)
・天井ボードの一部破損
・躯体壁・ボードの亀裂
・外壁タイル破損
・空調機グリルの落下・破損
・書架一部の側板破損、書架固定壁面破損
北青葉山分館     10,500冊
(図書   6,000冊
 製本雑誌 4,500冊)
  ・3階特殊資料室の大型地図キャビネット転倒
工学分館     40,000冊 ・壁の一部破損 ・機械室設備(パイプ)の破損
・書架の天つなぎのボルト外れ、側板外れ
農学分館    110,000冊
(2階閲覧室の全蔵書)
・3階ロフトエリア天井落下の危険性
 (立入禁止)
・壁の亀裂等損傷多数
・空調機落下6台
・事務室・共用書庫ドア鍵故障
・窓サッシパーツの外れ
・1階ラウンジ書架3台転倒

(1) 書籍の落下

(2) 施設

(3) 設備

2.対応状況(2022年3月24日時点→更新:5月13日時点更新:6月13日時点更新:10月11日時点

館名 (1) 発生直後の開館への影響 (2) 制限事項
本館 ・3/17(木),3/19(土)〜21(月・祝)臨時休館
・3/18(金)短縮開館(9-17時)
・3/22(火)〜通常時間での開館
1号館の一部エリア、2号館全体の使用不可利用不可エリアあり
医学分館 ・3/17(木)臨時休館
・3/18(金)〜開館再開(平日9-17時、時間外利用休止・土日祝は完全閉館)
・4/4(月)〜通常時間での開館
利用可能エリア限定:1階カウンター、ラーニングコモンズ、グループ学習室、2階閲覧室、別棟1階電動書架一部の閲覧席は利用禁止
北青葉山分館(臨時図書室) ・3/17(木)〜18(金)臨時休室
・3/22(火)〜臨時図書室開室再開(平日9-17時)
 
工学分館 ・3/17(木)〜3/18(金)午前 臨時休館
・3/18(金)午後〜開館再開(平日9-17時)
・4/4(月)〜開館時間拡大(平日9-20時、時間外利用不可)
・5/12(木)〜通常時間での開館
一部閲覧席等のみ使用可
農学分館 ・3/17(月)〜当面4/1(金) 臨時休館(部分開館について調整中)
・4/4(月)〜1階のみ、短縮開館(平日9-17時)
・4/20(水)〜2階図書エリア利用再開(雑誌エリア利用不可)
・4/25(月)〜開館時間拡大(平日9-20時、閉館時特別利用不可)

・6/10(金)~雑誌エリア利用再開
・6/13(月)〜通常時間での開館

・10/11(火)~ 全エリア利用可
・利用不可エリアあり
参考:【重要】地震の影響による開館状況について

3.これまでの書籍落下防止対策と今回の状況

(1) 落下防止バー

  • 学内の各館において、書架の上部2段の棚に落下防止バー(揺れを感知したら跳ね上がる仕様)を設置している。
  • 医学分館[写真左]等では、バー設置の棚からの落下は少なく、効果が見られた。
  • 農学分館[写真右]では、前回の福島県沖地震(2021年2月)の際、書籍が落下した後にバーが跳ね上がり、効果が見られなかった。このため、その後は通常時からバーを上げたまま運用していた。今回の地震では、1回目の横揺れでは持ちこたえたが、2回目の強い縦揺れでバーを飛び越えて書籍が落下、またはバーごと棚が落下した。

(2) 傾斜スライド棚

  • 東日本大震災後に入替・新設した書架の一部において、上部3段または2段に傾斜スライド棚(揺れを感知したら棚がスライドし傾斜する仕様)を導入した。今回の地震では、いずれも揺れを感知し、作動した。
  • 本館学生閲覧室[写真中]では、最上段の書籍は落下が多かったが、2-3段目は落下が抑制された。
  • 本館グローバル学習室[写真右]では、傾斜スライド棚(最上段、2段目)からの落下が抑制され、通常棚の3段目からの落下が多く見られた。

(3-1) 棚の傾斜

  • 東日本大震災後、工学分館の職員(当時)が棚を傾斜させるアタッチメントを独自開発し、既存の全ての棚に設置した。
  • また、震災で破損した書架を買い替える際に、メーカー品による傾斜棚を導入した。
  • 前回の福島県沖地震(2021年2月)では効果があり、最上段の書籍のみが落下するにとどまったが、今回の地震では、アタッチメントが外れるなどの影響により、落下冊数が前回の6倍に増加した(前回6,500冊→今回40,000冊)。

(3-2) 棚の傾斜(実験)

  • 前回の福島県沖地震(2021年2月)後、各館において書架設置業者とともに棚傾斜の実験を行っていた。
  • 本館[写真左]では、棚ごとに傾斜の角度を変えて試行しており、3度と4度は落下したが、5度では落下が抑制された。
  • 医学分館[写真中]では、傾斜棚は落下せず、通常棚は落下が見られた。
  • 農学分館[写真右]では、傾斜の有無に関わらず全て落下した。
  • 設置環境や地震の状況によって、効果の有無が分かれる。書架の形状によっては設置が困難な場合がある。書架の背板に書籍がぶつかる、または、反対側の書籍と背がぶつかり合うなど、書籍を傷める懸念がある。

(4) 落下抑制テープ

  • 東日本大震災後、館によっては落下抑制テープを貼付している。
  • 北青葉山分館では、今回も一定の効果が見られた。
  • ただし、貼付後10年以上経過し、テープが劣化している。

(5) 棚はめ込み式保存箱

  • 前回の福島県沖地震(2021年2月)では漱石文庫でも多数の落下があり、2021年11月に棚はめ込み式の保存箱を導入した(「図書館のみらい基金」を活用)。
  • 今回の地震では、上部2段から保存箱ごと落下した箇所があったが、箱内の書籍の破損は免れた。

(6) 滑り止め付きブックエンド

(7) チェーン、ひも

  • 日常の使い勝手とのトレードオフとなり、場所が限定される。
  • 書架の形状によって、限界がある。

(8) 集密書架

  • 集密書架自体は、転倒・暴走防止のため、制震・耐震性能を有している。
  • 通路が空いていない列では、書籍の落下を抑制でき得る。ただし、棚を動かした時点で、内部で傾いていた書籍が落下する場合がある。
  • 落下書籍の復旧にあたっては、固定書架はどの列も一斉に作業できるが、集密書架はブロックごとに1列しか入れないため効率が悪い。
  • 地震によって電気系統の故障が起きる場合があり、その場合は修理を待たないと復旧作業ができない。

(9) 低書架への転倒防止パーツ

  • 壁側の低書架に転倒防止パーツを設置しており、今回の地震では転倒しなかった。
  • 一方で、パーツ設置ができない通路側の低書架は転倒した。
  • 配架している資料の重量等の形状が異なるため一概には言えないが、一定の効果があったと思われる。

4.学生ボランティアの協力

東北大学課外・ボランティア活動支援センターボランティア支援学生スタッフSCRUMと、東北大学地域復興プロジェクト"HARU"から、落下書籍復旧の手伝いのお申し出があり、以下の活動を行ってくださいました。早期復旧に向けて貢献いただいたことに深く感謝申し上げます。

館名 (1) 期間・活動日数 (2) 人数 (3) 総時間数
本館 3/28(月)〜4/28(木)のうち15日間 17名 94時間
農学分館 4/5(火)〜4/8(金)の4日間 7名 44時間



なお作業中は、以下の点に留意しました。
必ず図書館職員が一緒に行動する / ボランティア保険に加入してもらう / ヘルメットや軍手等を用意する / 参加人員・時間の把握を正確に行う(余震発生時等のため) / 余震発生の確認のためにラジオを点ける / 定期的に休憩をとる

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