附属図書館長 年頭挨拶(2021年)
2020年は、新型コロナウイルス感染症で明け暮れた1年でした。医療や対策の最前線で活躍されるすべての方々に敬意を表します。 全国で緊急事態宣言が出された頃、本学附属図書館も休館を余儀なくされました。第一波が収束した6月下旬より再開館し、 秋学期からは入館時の検温、フィジカルディスタンスやトレーサビリティの確保等の感染防止対策に注意を払いつつ、 対面授業が開始された学生に向けて「Go To 図書館」キャンペーンを展開しました。
この間に「ニューノーマル」と呼ばれる新たな行動様式が模索され、東北大学においては「オンライン事務化宣言」により、 「窓口フリー」「印鑑フリー」「働き場所フリー」等が実現化しつつあることは喜ばしいことでした。 附属図書館でも、それぞれの館や室において対応を行っています。
関連して、本学では「教育・研究のデジタルトランスフォーメーション(DX)」も推進しつつあります。 附属図書館はオープンアクセス、オープンサイエンスの促進に関して、重要な役目を果たす立場にあります。 その先駆として、国文学研究資料館(国文研)と連携した「狩野文庫デジタルアーカイブプロジェクト」では、 2020年9月に第一弾として232点の画像を公開するとともに、12月に国文研館長のロバート・キャンベル先生をお招きし、 記念のオンラインシンポジウムを開催しました。 また同じく12月には、2019年に行ったクラウドファンディング による資金をもとに、漱石文庫の自筆資料のデジタル画像を公開することができました。今後、さらに史料館や他の部局とも連携して、 東北大学の至宝と言うべき文化・学術資源の公開を進めるとともに、デジタルライブラリーとしての側面も充実させていく必要があるでしょう。
附属図書館が取り組むべき課題として、以下のようなものがあると考えます。
(東北大学附属図書館所蔵)
■ハイブリッドな図書館のあり方を模索する
ニューノーマルな時代においては、大学としても、図書館としても、サイバー空間とリアル空間の融合的活用を目指すことが不可欠です。
図書館は、ウィズコロナの状況においても、安全安心な学習・研究の場を提供し、100年以上にわたり整備してきた蔵書を活用するとともに、
デジタル化、そしてさらにその先にあるDXを強力に進め、ハイブリッドな環境を構築していくことが求められます。
■研究活動への支援を加速させる
学内の研究成果の効果的な発信のためには、オープン化のためのプラットフォーム機能を拡充する必要があります。
関連部局との連携により、研究成果物の収集・保存・発信にとどまらない研究プロセスへの関与を強化する必要があります。
■ハイブリッドな教育を支援する
対面とオンラインを併用する授業実施のためには、必要な文献(電子資料を含む)の整備とともに、教材作成・配信における著作権処理が必要です。
図書館としてこのような教育の支援に取り組むことが重要と考えられます。
■多様なバックグラウンドの構成員に向けた学習支援を行う
国籍、ジェンダー、障がい等に関して多様なバックグラウンドを持つ学生や教職員のニーズに応えられる利用環境を整備し、
教員や他部局、また学生自身との協働による、国際共修を含む学習支援を充実させることが肝要です。
■社会への貢献を強化する
附属図書館は学内の研究成果のオープン化に積極的に関与することにより、シチズンサイエンスの興隆にも寄与することが求められています。
また、図書館で脈々と受け継がれてきた文化・学術資源をデジタル化して公開にすることにより、いっそうの社会還元を推進していきます。
図書館は知を求める多様な利用者が活用する場です。そのためには、今後さらに、多様な職員が活躍する場となるよう、図書館のダイバーシティの向上にも取り組んでいきたいと思います。
新型コロナウイルスに対するワクチンの開発には、当初は数年かかると見積もられていましたが、コロナウイルスの遺伝子情報を元にしたmRNAワクチンという、 いわばワクチン開発のDXにより、すでに英米でのワクチン接種が開始されています。コロナの収束がいつになるか、現時点で予測することは困難ですが、 感染症対策を徹底し、安全安心な図書館として、リアルにも多くの利用者を受け入れられるよう務めてまいります。
東北大学附属図書館長
大隅 典子