東北大学附属図書館 夏目漱石ライブラリ

こゝろ

(初 出)朝日新聞 大正3年4月20日~8月11日
(単行本)大正3年9月 岩波書店 漱石自装

(内 容)
 この小説の主人公である「先生」は、かつて親友を裏切って死に追いやった過去を背負い、罪の意識にさいなまれつつ、まるで生命をひきずるようにして生きている。と、そこへ明治天皇が亡くなり、後をおって乃木大将が殉死するという事件がおこった。「先生」もまた死を決意する。だが、なぜ…。(岩波文庫解説 より)

(自作への言及)
(前略)当時の予告には数種の短編を合してそれに『心』といふ標題を冠らせる積だと読者に断ったのであるが、其短編の第一に当る『先生の遺書』を書き込んで行くうちに、予想通り早く片が付かない事を発見したので、とう/\その一篇丈を単行本に纏めて公けにする方針に模様がへをした。
 然し此『先生の遺書』も自から独立したやうな又関係の深いやうな三個の姉妹篇から組み立てられてゐる以上、私はそれを『先生と私』、『両親と私』、『先生と遺書』とに区別して、全体に『心』といふ見出しを付けても差支えないやうに思つたので、題は元の儘にして置いた。たゞ中味を上中下に仕切つた丈が、新聞に出た時との相違である。
 装幀の事は今迄専門家にばかり依頼してゐたのだが、今度はふとした動機から自分で遣つて見る気になつて、箱、表紙、見返し、扉及び奥附の模様及び題字、朱印、検印ともに、悉く自分で考案して自分で描いた。(後略)(『心』自序)

 あの『心』という小説のなかにある先生という人はもう死んでしまいました。名前はありますが覚えても役に立たない人です。あなたは小学の六年でよくあんなものをよみますね。あれは小供がよんでためになるものじゃありませんからおよしなさい。(後略)(大正3年4月24日松尾寛一あて書簡)

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