附属図書館長 令和2年度初頭挨拶
令和の2年度目が始まりました。
9年前の東日本大震災の折、東北大学は津波の影響はありませんでしたが、震度6の揺れにより附属図書館も甚大な被害を蒙りました。
当時、私は研究室で大学院生とディスカッション中で、急いでテーブルの下に隠れました。たった2分ほどの時間が気の遠くなるくらい長く不安に感じたことを思い出します。
復旧作業を粛々と進めていた中、約1ヶ月弱後に、再度、M7.2の余震に見舞われました。ちょうど、シジフォスの岩のエピソードのような徒労感でした。
そんな中でも季節は動き、桜の木々は花を付けました。花は人に見られるために咲いているわけではありませんが、見る人のこころを和ませると、しみじみ思いました。
春になって桜が咲く、その自然の摂理の中で、生かされていることの有り難さを感じました
今年は残念ながら、新型コロナウイルス感染症蔓延により、お花見は自粛。桜は宴会の口実ではなく、一人ひとりが楽しむものとなりました。
ある意味、本来のあるべき姿なのかもしれません。
四季折々の行事やルーチンによって成り立っている私たちの生活に突然やってきたコロナ禍は、いわば「泰平の眠りを覚ます蒸気船」のように思われます。
平成の30年の間、世界の変化の中、日本はいわば戦後の成功体験にあぐらをかき、惰眠をむさぼってきました。
今回の新型コロナウイルスは黒船として、今の日本を変えるきっかけとなっているように感じます。
例えば、すでに今世紀の初頭から世界で浸透していたインターネットの利活用に関して、日本は大きく遅れを取っていましたが、
今回、一斉休校や外出制限の対応として遠隔授業やテレワークを推進することが加速されています。
本学でも、ウェブ会議やペーパーレス会議への移行や、講義の録画対応等を進めています。制度として定着し、働き方の改革にもつながってほしいと思います。
附属図書館も、新たな時代にふさわしいギアチェンジが必要です。粘土板から紙、そしてディジタルへと、情報や知識の媒体は変化してきました。
知をアーカイブし、学びを創発する場としての図書館のあるべき姿はどのようなものか、真剣に模索する好機が訪れたと感じます。
前例の無いことに挑戦するときに必要なのは想像力です。そして、少々の失敗を許す包容力です。
一人ひとりが、今、何ができるか、どうしたら社会を良くできるか、考えながら前に進んでいきましょう!
東北大学附属図書館長
大隅 典子