東北大学附属図書館 夏目漱石ライブラリ

彼岸過迄

(初 出)朝日新聞 明治45年1月2日~4月29日
(単行本)大正元年9月 春陽堂

(内 容)
 いくつかの短編を連ねることで一篇の長編を構成するという漱石年来の方法を具体化した作。その中心をなすのは須永と千代子の物語だが、ライヴァルの高木に対する須永の嫉妬を漱石は比類ない深さにまで掘り下げることに成功している。この激しい情念こそは漱石文学にとっての新しい課題であった。(岩波文庫解説より)

(自作への言及)
 「彼岸過迄」というのは元日から始めて、彼岸過迄書く予定だから単にそう名付けた迄に過ぎない実は空しい標題である。かねてから自分は個々の短編を重ねた末に、其の個々の短編が相合して一長編を構成するように仕組んだら、新聞小説として存外面白く読まれはしないだろうかという意見を持していた。が、ついそれを試みる機会もなくて今日迄過ぎたのであるから、もし自分の手際が許すならば此の「彼岸過迄」をかねての思はく通りに作り上げたいと考えている。 (「彼岸過迄に就いて」)

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