東北大学附属図書館 夏目漱石ライブラリ

虞美人草

(初 出)朝日新聞 明治40年6月23日~10月29日
(単行本)明治41年1月 春陽堂

(内 容)
 明治43年、朝日新聞に入社した漱石が職業作家として書いた第1作。我意と虚栄をつらぬくためには全てを犠牲にして悔いることを知らぬ藤尾に超俗の哲学者甲野、道義の人創宗近らを配してこのヒロインの自滅の悲劇を絢爛たる文体で描く。漱石は俳句を一句一句連ねるていくように文章に苦心したという。(岩波文庫解説より)

(自作への言及)
 『虞美人草』は毎日かいている。藤尾という女にそんな同情をもってはいけない。あれは嫌な女だ。詩的であるが大人しくない。徳義心が欠乏した女である。あいつをしまいに殺すのが一篇の主意である。うまく殺せなければ助けてやる。しかし助かればなおなお藤尾なるものは駄目な人間になる。最後に哲学をつける。この哲学は一つのセオリーである。僕はこのセオリーを説明するために全篇をかいているのである。だから決してあんな女をいいと思っちゃいけない。小夜子という女の方がいくら可憐だかわかりやしない。(明治40年7月19日小宮豊隆あて書簡)

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