TOHOKU UNIVERSITY LIBRARY 東北大学附属図書館

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漱石文庫について

受入の経緯

 漱石文庫が本学に譲渡されることになったのは、当時の本学附属図書館長で、漱石の愛弟子でもあった小宮豊隆(1884~1966)の尽力による。

漱石と小宮豊隆

漱石(中央)と小宮豊隆(向かって右下に座り込んでいる人物)

 搬入は、昭和18年(1943)からはじまり、昭和19年3月に完了した。漱石の旧蔵書が保管されていた早稲田南町の漱石山房は、昭和20年3月10日の空襲で焼けてしまったため、結果的には漱石文庫は本学に移されたことで焼失を免れたことになる。小宮豊隆は、漱石文庫の受入の事情について、次のように回想している。

漱石の藏書がほんの僅かの篤志家だけに利用されるのでは勿體ない。なるべく多くの漱石研究家の役に立てるには、どうするのが一番いいかといふのが、曾て我我の問題だった。そのためには漱石の書齎、書齎の調度、本棚、藏書などを遺族の住居から截り放し、漱石博物館とでもいふようなものを作るのが一番いいといふことになつたが、しかし時勢が時勢だつたので、それに必要な費用の調達しやうがなく、たうとうそれは斷念して、藏書だけでもどつかに寄附するといふことに方針を變更しなければならなかつた。(中略)
 いろいろ考へた末、丁度私が仙臺の大學の圖書館長をしてゐた關係上、漱石の藏書を思ひ切つて仙臺へ寄贈してもらふことにした。仙臺の大學ではヴント文庫だのシュマルソウ文庫だの、その他いろいろの文庫が一纏めにして別置してある。のみならず狩野亨吉の藏書やケーベルの藏書のほとんど全部も、大學の圖書館に來てゐる。狩野亨吉は漱石の親友であり、ケーベルは漱石の敬愛してゐた先生である。利用の面から言つてあまり適切であるとは言へないが、しかし狩野文庫とケーベル文庫とがある中に、漱石文庫があることは、きはめて自然なことであるといふことができる。漱石文庫にもし靈があるとすれば、その靈はむしろ仙臺に來ることを喜ぶに違ひない。それで私は部屋の都合を無理につけて、ケーベル文庫と漱石文庫とを一室に別置し、その部屋にケーベルの寫眞と漱石の寫眞とを掲げることにした。
(「漱石文庫」『人のこと自分のこと』)

  上に述べられているように、漱石文庫は、当初は小宮豊隆の意向で恩師ケーベルの文庫と並んで保管されていたが、その後の図書館移転等により、現在は全体が貴重書庫に納められている。昭和46年(1971)に『漱石文庫目録』が作成され、さらに仙台文学館開館に伴い、仙台市と共同でマイクロフィルム化を進め平成9年度末に完了した。

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漱石文庫の蔵書構成

冊数 点数 傍線 書入れ 傍線書入れ 記入計 記入/点数
I 洋書 1647 1128 126 32 234 392 34.8%
1 文学 1139 809 97 24 178 299 37.0%
(1)文学一般 50 42 8 2 10 20 48.0%
(2)英文学 879 598 55 20 134 209 35.0%
(3)他国文学 210 169 34 12 34 80 47.3%
2 歴史 33 24 3 0 2 5 21.0%
3 哲学 106 86 11 2 31 44 51.1%
4 科学 88 87 1 0 10 11 12.6%
5 芸術 137 38 5 1 6 12 32.0%
6 語学 103 85 7 2 5 14 16.5%
7 雑書 51 48 2 3 0 5 10.4%
8 逐次刊行物 50 11 0 0 2 2 18.1%
II 和漢書 1215 430 1 13 5 19 4.4%
1 俳句・俳文 146 59 1 1 0 2 3.4%
2 漢詩・漢文 203 63 0 1 2 3 4.7%
3 語録・道話 90 48 0 0 2 2 4.2%
4 画帳・拓本 224 123 0 2 0 2 1.6%
5 和歌・国文 100 18 0 3 0 3 16.6%
6 小説・随筆 80 23 0 2 0 2 8.7%
7 字書 139 22 0 1 0 1 4.5%
8 歴史・地理 68 47 0 1 0 1 2.1%
9 雑書 165 27 0 2 1 3 11.1%
III 以下省略
合計 2862 1558 127 45 239 411 26.4%

原田隆吉「東北大学附属図書館『漱石文庫』の成立」より引用(東北大学附属図書館『図書館学研究報告9』1976.12)

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漱石文庫の利用について

漱石文庫は当館で貴重図書指定しています。資料は大きく図書と自筆資料類に分けられ、全点マイクロフィルム化が完了しており、フィルムでの閲覧や複写ができます。自筆資料については全点電子化し東北大学デジタルコレクションで公開しています。

マイクロフィルムでの利用に関するお問い合わせ先

レファレンス(参考調査)Reference Service
1号館レファレンスデスク(レファレンス係)
(022) 795-5941
mail:ref@
@は「@grp.tohoku.ac.jp」に置き換えてください。

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