第1部:お菓子

 第1部では、お菓子に関する資料をご紹介します。江戸の人々は、どのようなお菓子を愉しんでいたのでしょう。彩り豊かな和菓子のコレクションとともに、庶民の目を楽しませる工夫が見える本にもご注目ください。

菓子譜

菓子譜 画像 1
菓子譜 画像 2

菓子譜(かしふ) 2 巻 2 冊

(狩野文庫 6-19752-2)

日ごろ古典文学に慣れ親しんだ教養層から、菓子の注文を受ける際に使われた絵図帳。『古今和歌集』から着想を得た菓子も多く見られ、流水に紅葉を散らした「竜田流(たつたながし)」と呼ばれるデザイン(画像1右端)は、

 竜田川 紅葉乱れて ながるめり わたらば錦 中やたえなむ〈よみ人しらず〉
 (たつたがわ もみじみだれて ながるめり わたらばにしき なかやたえなむ)

という歌による。

餠菓子即席増補手製集

餠菓子即席増補手製集 画像 1
餠菓子即席増補手製集 画像 2

餠菓子即席増補手製集 (もちがしそくせきぞうほしゅせいしゅう) 1 冊

十返舎一九 1805 年(文化 2) (狩野文庫 6-19769-1)

『東海道中膝栗毛』の著者として有名な十返舎一九が、文章だけでなく挿絵と文字の下書きまで手掛けたとされる。餅菓子をはじめとして、ちまき、まんじゅう、ようかん、あめ類、せんべいなど、たくさんの菓子の作り方が記されている。挿絵には、餅米をせいろで蒸して臼でつく様子(画像1)、炭火でカステラを焼く様子(画像2)などが描かれている。一部に実在しない菓子名が混ざっているなどもあるため、本格的なレシピ本というよりは、庶民が手にして楽しむための本であった。

鼎左祕録

鼎左祕録 画像 1
鼎左祕録 画像 2

鼎左祕録 (ていさひろく) 1冊

国華山人 1853年(嘉永5)(狩野文庫 6-19683-1)

序文に「青物砂糖漬の伝書」と述べられる通り、砂糖漬けについて、一般的な製法と、ナス、レンコンなど個々の材料別に前処理の仕方などを記載する。そのほか、ようかんやカステラといった様々な菓子の製法や、雑篇として料理ではない豆知識的な項目も多く含まれる。