(展観目録第67号)
「古文庫」に関する図書展目録
 
 日 時  昭和41年3月9日(水)10日(木) 各12時から16時まで
 会 場  東北大学附属図書館会議室
 
○ 古文庫大観
 荘子は多くの書物を持っていたが、その文庫を巡回公開した。これが巡回図書館の始であり、個人文庫公開の祖とも見られている。これはシナにおける公元前のことであるが、当時から王侯貴族のあるものは文庫所有していた。しかしそれを公開したか否か、また公開非公開にかかわらず、その文庫の運営や蔵書目録等は不明の点が多い。ただ比較的蔵書目録の残っているものがあり、今日からも当時の学術文化の研究は可能な場合がある。今日のめざましい図書館の発展は、こうした永い永い前史をもっていたので、今回は、この時代のわが国の図書館の有様を忍ぶこととした。ただ所蔵文献が少ないので充分とは云えないが、仙台の三文庫関係や、文庫碑、蔵書目録等を陳列して、図書館に関する認識をより一層深めたいとおもう。中には宮崎文庫のように学校であったものもあり、わが国学校の発達との関係を知る資料も得られよう。
目   録
◎ 一 般
1. 書庫ノ起原 植松要撰 昭和2 (図書館研究双書)
2. 日本文庫の興廃略史 高木文選 昭和8
3. 文庫 明治23-25 (日本教育史資料8)
4. 日本文庫史 小野則秋撰 昭和17
5. 日本文庫めぐり −蔵書の運命− 岩猿敏生等編 昭和39

6. 輪蔵 (転輪蔵 転関経蔵) (経蔵一柱に機輪を以て転廻す)(北斎漫画5)
◎ 文 庫 各 種
7. 金沢文庫考 附 称名寺国宝古文書等目録 近藤守重撰 中村真禅編 明治44
8. 金沢文庫の鼠害 (好蘭斎随筆1)
9. 紅葉山文庫と書物奉行 森潤三郎撰 昭和8
10. 中村氏書庫記 猪飼敬所撰 自筆本(巻子)(安政2(1855)奥書)(信州の人中村大明が同国伊那大出の蕗原庄に、文化13(1816)蕗原文庫を立て同志に解放した。本藩はこれを官庫としたことを述べたもの。外題「書庫記」)
11. 仏巖寺の書庫 (黒甜瑣語二2)(本庫には金沢文庫本が多いと)
12. 宮崎文庫式条 附 文庫条例 外宮法式大概 八木宗直撰 写本 (万治4(1661)
文庫行事等を定めたことなどを記す。)
13. 林崎文庫之碑一枚 本居宣長撰 屋代弘賢書 (拓本)
14. 林崎文庫記一枚 柴野栗山撰 浅野長祚書 拓本
15. 勢州山田原宮崎文庫眺望之境地 与村弘正等編 写本
16. 宮崎文庫 (書□贅筆694頁)
  (外宮祠官の講習討論の寮として慶安元年(1648)文庫衆70人の建立という)
17. 豊宮崎文庫書籍目録 写本(明治13写)
18. 豊宮崎文庫所蔵書籍並品物目録 (明治41年8月現在)(同文庫編)
19. 奉納書籍聚跋 大塩後素撰 天保4(1833)序 (洗心洞から豊宮崎文庫へ奉納した図書の跋文をあつめたもの。前項目録に見える)
20. 林崎文庫の蔵書印
21. 林崎文庫の図 宮川随筆(河野省三撰)所蔵
○仙台三文庫
22. 竜宝寺法宝蔵 同輪蔵の写真(目で見る仙台の歴史73頁 昭和34)
  仙台市八幡町竜法寺に在った。同寺25世実政が正徳4(1714) 私有の和漢書16433巻(目録は一巻少い)を寺蔵とすることが允許され、翌年、私費で文庫を建立、有志の閲覧に供した。その輪蔵は一辺の長さ三尺の八角形。抽出40箇。これが仙台における公開図書館の始といわれる。時の藩主綱村公はこの挙を賞して清板大蔵経(大日本寺院総覧には明板と云う)一具を賜った。この准国宝といわれた輪蔵と蔵書は昭和14年3月2日焼失してしまった。それ迄に蔵書は散失して、清板蔵経の零本を坊間で実見したこともある。その目録は上野図書館紀要3に見える。因に経蔵の現存するものは法隆寺だけで、その遺跡の判然しているのは、平泉毛越寺、仙台国分寺、紫香市(滋賀県)廃寺跡という(河水春秋36.8.11)輪蔵は成田山にもある。
23. 竜法寺法宝蔵 小倉博撰 昭和23(「仙台」80頁)
24. 桜陰腐談二冊 釈 実政撰 正徳2(1712)
  著者は□法寺法宝蔵の設立者 梅国と号す 享保5(1720)寂 55才 博覧多□書はこの外10種余ある。
25. 無刑録三冊 蘆野徳林撰 佐伯復堂訳註 昭和2-5
  撰者は竜法寺法宝蔵を利用した一人。安永5(1776)卒81才
26. 名山蔵書目録 東郷(藤塚知能)集校 写本
  名山蔵文庫は塩釜神社祠官藤塚知明が寛政9(1789)設立。同志に開放した。蔵書は約一万巻、その中には、有名な書賈村井古岩の寄贈本数百部もあった。(河北新報34.12.23)本庫も幾変遷を経て今日は散亡してしまったという。本書は仙台藩儒畑中荷沢(寛政9列64)の序があり、大約千八百種を収めている(名山蔵書目録原本は宮城県立図書館所蔵という)
27. 山海饗 藤塚塩亭撰 写本
  撰者は名山蔵文庫(後名、一宮文庫)の設立者 寛政11(1799)卒
  本書はいろは分にした魚鳥菓子等の辞書。末に、明治34年飯川勤の識語がある。
28. 名山蔵図書印
29. 青柳館文庫の写真 (好書雑載 目で見る仙台の歴史)
  本館は文政12(1812)、青柳文蔵が、私蔵書を仙台府学へ寄贈し、天保2(1831)文庫も造立して、一般に公開したものである。今日でもその遺構は宮城県立図書館境内に見られる。
30. 東山松川村青柳文蔵籾備蔵建方之儀ニ付萬御下知留。文政十三年改之。天保元年。
  (古文献資料第7所収)(青柳館文庫の維持方法及び窮民救済のため青柳倉建設の記録である。)
31. 青柳館書目 写本(芳賀定保写)
  蔵書は四部に分れ2885部20050巻、9938冊(青柳館文庫蔵書目録)といわれるが、明治維新の際流出し、大半は山形県漆山の榛沢氏に帰した。(曳尾堂蔵書目録。漆山又四郎伝参照)残部は県立宮城図書館にあり、昭和戦災にも疎開したため焼失を免かれたという。蔵書目録としては斎藤報恩会に「青柳館文庫総目録」「青柳館蔵書目録」いづれも写本一本がある。尚三文庫の書目は「本喰ひ蟲五十年」にも見える。
32. 青柳館文庫の蔵書印(中庸古註所押)
  有名な勿折角云々の蔵書印は、元の趙子昂の「趙文敏日、有人、得我書者」に続いた読書の心得を誡めた文句で、公の言には下句が続いてある。
33. 続諸家人物志三巻 青柳文蔵撰 文政12(1829)
  著者は青柳館文庫創立者、天保10(1839)卒 79 仙台人名大辞書に、その伝と肖像が見える。著書は本書の正、補があるようで、その豊富な蔵書によってできたものであろう。
○ 文庫講
34. 住吉神社御文庫貴重図書目録 大阪書林御文庫講編 昭和8
○ 書目(学校・大名の一例)
35. 足利学校蔵書目録 新楽定編 写本(福山文庫の印がある)
36. 顕徳公内庫文書部類目録 佐竹家編 原本(嘉永−明治まで。朱註がある)
37. 「飯田城主堀氏書庫」の蔵書印(東鑑所押)
  信州十一藩の一である飯田藩二万石の藩主堀氏の蔵書印
38. 南御土・中蔵 御蔵書目録 原本(明治9調)(点検の記号がある)
◎ 我国公開図書館の始祖
39. 千五百年記念 石上宅嗣卿 同□彰会編 昭和5
40. 日本最初の公開図書館 芸亭院 桑原信夫撰 昭和37(同院創始千二百年記念会)

41. 僧海量書画帖一帖 原本
  海量は今の滋賀県覚勝寺の僧。文化14(1817)に寂。85。県居門人で図書館運動者。その行跡は小野則秋氏の「江戸期における海量の図書館運動」(京都図書館協会編図書館の学と歴史)やその他にある。陳列書は文化11、82才の時のもの。
42. 僧海量(大館地方に足跡を印せし人々)(大館史談会誌2 昭和10.2)