創立111周年記念/令和4年度企画展 本をめくる、印をめぐる ―東北大学の蔵書印から―

蔵書印とは?

蔵書印の歴史

 「蔵書印」は書物の所有者を明らかにするために蔵書に捺した印影で、書物が限られた者しか手にすることができない情報源であった時代から、後世への情報伝達のために(個人の)コレクションを散逸させないという意図も含んで使用されてきました。
 蔵書印が生まれたのは中国で、その後日本に伝わりました。日本への正確な伝来時期は不明ですが、最古のものでは天平時代(奈良時代)に使用された例があります。はじめは寺社や高貴な身分の人々など、使う層は限られていましたが、江戸時代になり出版物が増え、庶民にも読書人口が増えたことで、個人の蔵書印なども現れました。
 「蔵書に印を押す」という文化は東洋独特のもので、西洋では「蔵書票」と呼ばれる小紙片が同じ役割を果たしていました。本学で所蔵している古い洋書には、蔵書票の貼付されたものがみられます。

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蔵書印の種類

◆ 押されている場所

 基本的に表題紙(図書の冒頭にあるタイトルが記載されたページ)・見返し(図書の表紙裏と表題紙の間に綴じられたページ)・巻末のどこかに押印されています。また、図書の所蔵者が変わっている場合、複数の蔵書印が押印されていることがあります。

◆ かたち

 正方形、長方形、短冊形、菱形、多角形、円形、楕円形、不規則円形、図像形、文字、動植物を模した形態のものがあります。

◆ 書体

 蔵書印の起源は中国ですが、そのデザインや形、印文のバリエーションは日本のほうが多様だといわれています。書体が多様であることに加え、漢字の他に「かな」(万葉仮名、片仮名、平仮名)を用いていることで文字の種類が多いことも要因のひとつと思われます。また、個人の蔵書印には自筆を用いたものもあります。

書体の例:

  • 篆書(漢字のもっとも古い書体)
  • 隷書(篆書を簡略化して作ったものとされ、篆書より直線的)
  • 楷書(隷書の筆法を簡潔にした書体。くずさないで書く)
  • 行書(楷書をややくずした書体)
  • 草書(楷・行・草と三段階あるうちでもっとも崩したもの)

◆ 色

 「朱墨」といわれるように印刷や書写された文字や図画の墨色に対し最も鮮明な色であり、かつ退色しにくいことから、蔵書印には主に朱色が使われてきました。一方で、朱色は古くから高貴な色とされていることから、個人の蔵書印には黒や藍、青、緑なども用いられています。また、浮き出し印や空押し印(エンボッシング)のように、着色ではなく凹凸で表す印もあります。

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正方形の印影
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円形の印影
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正方形の蔵書印