(展観目録第129号)
子年に関する図書展目録
 
 日 時  昭和47年1月18日(火)19日(水) 各午後1時から4時まで
 場 所  東北大学附属図書館会議室
 
 鼠は早くから人間社会に入り込んで、十二支の第一に位している程であるから、その記録文献は甚だ多い。詩経には相鼠の詩がみえ、韓非子には城狐社鼠(外儲説右上伝二)の説が述べてある。その他いろいろのことが語りつがれている。
 年をへて君をのみ社寝住みつれ、異の腹にや子をばうむべき(藤原輔相作。拾遺和歌集巻八雑上)という和歌もあるが、俳諧・千柳等にはよい詠物となり、ことに嫁が君と称して俳句の季題にとりあげられ、また言語や民俗(話)にも多くあらわれている。したがって室町頃から小説界によい題材を供して文芸界をにぎわしたのである。
 
◎ 総雑
1. 鼠 世界大百科事典17 平凡社1967刊
2. 鼠に関する民俗と信念 南方熊楠撰(南方熊楠全集2、十二支考(二))
3. 鼠の助け 別所梅之助撰(聖書民俗考)

4. ねずみ 谷川士清(−1776)撰 和訓栞前編二十二
5. 鼠分鼠 恩田宣充(−1813)撰 ケイ棲腐談
6. 大鼠 菊岡米山撰 諸国里人談巻三
7. 百年鼠 含穂亭釈達央編 経□キ漫録巻三
  山崎美成は、抱朴子一を抄して「鼠寿三百歳 満百歳則色白 善憑人 而下名曰仲 能知一年中吉凶及千里外事」と
8. 海中から出た鼠 広瀬謙(−1863)撰 九桂堂随筆第八
9. 群鼠横暴 度会延貞撰 蟄居紀談下
10. 鼠石鼠五能 亀田興(−1826)撰 善身堂漫録上
11. 鼠成人語 含穂亭釈達央編 経□キ漫録巻一
12. 鼠卵を盗む 太田錦城(−1825)撰 梧窓漫筆三編下
13. 猫性不如鼠 北峯逸人編 撩天間話巻二
14. 鼠のなき声 浜田孝国(−1855)撰 木綿垣の記一
15. 鼠使い 喜多村信節(−1856)撰 嬉遊笑覧巻十二
16. 河川藤坂村鼠塚 中村弘毅(−1887)撰 閑度雑談巻中

17. 能州の鼠害 青地礼幹編 可観小説巻三五
18. 文献に見えた鼠害     〃
19. 捕鼠法 釈・殊意癡撰 白河燕談巻三
◎ 料理
20. 蜜喞 本山荻舟撰 飲食事典
  「鼠を食へば、寝小便がなほる」という俗説があり、これが信ぜられ実行された。料理としては、悪食(いかものぐひ)である。
◎ 遊戯
21. ねずみごっこ 嬉遊笑覧巻十二 小高吉三郎撰 日本の遊戯
22. ねことねずみ
◎ 民話(俗)
○ 鼠の嫁入
23. 鼠の娵入 大我老圃撰 天保佳話
24. 鼠の嫁入図 永尾竜造撰 支那民俗誌巻二
  四川・雲南に行われたもの 彩色 もとは鼠害防禦のものか。
25. 鼠の嫁入り 〃
  (1) 嫁入りの意義 (2) 嫁入り日取り (3) 鼠に関する俗信 (4) 嫁入り道具と其の意義 (5) 嫁入りに就いての説話に分述す
○ 鼠浄土
26. 鼠浄土 綜合日本民俗語彙3 世界百科大事典十七
27. 鼠経       〃
○ 鼠と火難
28. 鼠火災を避くとの説 中村定保撰 松亭漫筆上
  俗に「鼠の居る家は火難がない」と云われ、いろいろ記録されている。
29. 鼠を薫すは火災の崇 高田与清(−1847)撰 松屋筆記巻六二の四六
○ その他
30. 鼠衣を噛むと吉 恩田宣充撰 栩々園随筆巻二 同撰米倉余話一
31. 家の守護鼠 松浦静山(−1841)撰 甲子夜話巻四四
32. 鼠の怪異 滝沢馬琴(−1848)編 兎園小説第九集
33. 鼠恩死のこと 耳嚢巻五下
34. 鼠 鈴木重光編 相州内郷村話

35. 子曰遊図 写本(彩色) 巻子本
◎ 演劇
36. 鼠小紋東君新形(鼠小僧ー五幕) 古河黙阿彌(−1893)撰 (河竹黙阿彌全集 第二巻)

37. 鼠小僧次郎吉御仕置書 雑談集上
38. 仁木弾正 豊国書 綿絵(戯子姿見)
  川柳に「猿に逐はれた小栗栖のぬれ鼠」、猿を秀吉、鼠を光秀に擬す。
◎ 絵画
39. 鼠図 白井直賢筆 (国華八一号)
  筆者字は子斎。号は文挙。仲八郎と称し、円山応挙の門人。文化頃の人で、狙仙の猿、岸駒の虎と直賢の鼠とは、芸林の三対と目さられる程である。
40. 鼠図 白井直賢筆 (国華一二二号)
  羽箒福寿草に鼠の絵。本居太平の讃がある。
41. 鼠図一枚 梅村景山筆 墨画
42. 群鼠食爪図 宋・銭舜挙筆 絹本着色 (国華一六七号)
  銭氏は景定間(1260-64)の郷貢 呉興八俊の一
43. 十二支図一枚 梅村景山筆 淡彩
44. 十二支図一枚 梅村景山筆 張込
45. 鼠の嫁入 英一蝶(−1724)筆 鈴木隣松補 安永2(1773)刊
46. 祝言富貴鼠 刊本
◎ 文芸
○ 和文
47. 鼠賦 釈・運敞(−1693)撰 山口幸充撰 嘉良喜随筆巻二
48. 鼠賦並引 向井去来(−1704)撰 (風俗文選巻二)
49. 鼠をせむることば 太田南畝(−1822)撰 (よものあか上)
○ 俳句
50. 嫁が君 図説俳句大歳時記・新年(角川書店編 昭和40抄)
  俳句にあらわれた鼠を紹介す
○ 小説
51. 寛永飢饉鼠物語 (福斎物語) 仮名草紙
  寛永18年(1641)暮れからの近畿地方の飢饉の状況を述べた事実小説。其中に大黒や鼠のことを説く。薬師通夜物語の改題。
52. ねこ鼠大友のまとり 近藤清春(正徳頃の人)筆 湯島天神女坂、さかみや坂 赤本
  享保10年(1725)9月、竹本座の操狂言に上演した竹田出雲作「大内裏大友真鳥」を、猫と鼠にあてはめて滑稽化したもの。
53. 鼠花見 近藤清春筆 享保年中刊 丹表紙 さかい町中島屋板
  享保時代には珍しい亀井戸・浅草・上野の花見をえがき、見物人を鼠に見立てている。当時の風俗も見られる。鼠にちなんで江戸の繁栄を祝福したものであろう。題簽の左右に「かくれさとのゆふらん」「花よりだんごをひくねづみ」の傍書が添えてある。
54. 鼠嫁入蝙床 [ 安永元(1772)刊 ] 黒本(鶴屋板)
55. 鼠のよめ入 山崎美成(−1856)撰 世事百談巻四
56. 鼠子婚礼鹿(塵)劫記 曲亭馬琴(−1843)撰 歌川豊国(−1825)画 黄表紙 寛政
5(1793) 泉市板
57. 鼠小紋東君新形、三編十二巻 柳水亭種清(−1908)撰 二世歌川国貞(−1880) 画
 合巻 安政4(1857)刊 後に黙阿彌の歌舞伎世話狂言「鼠小僧次郎吉」となる。