(展観目録第119号)
鉄道に関する図書展目録
 
 日 時  昭和45年12月8日(火)、9日(水)各午後1時から4時まで
 会 場  東北大学附属図書館会議室
 
○ 日本鉄道略史
George Stephenson(1781-1845)が蒸気機関車を発明したことによって世界の交通事情は一変した。
 1830年、英国のLiverpool-Manchester間で開通した鉄道が企業としては世界最初のものといわれている(1825年同じ英国のStockton-Darlington間の開通を最初とする説もある)。以来42年。明治5年(1872)には、わが国でも新橋ー横浜間18マイル(現在の汐留貨物駅と桜木町間の約29キロ)にはじめて鉄道営業が開始された。長い鎖国による政治、経済の遅れを一挙に取り戻し、欧米先進諸国と肩を並べる近代国家を建設するには鉄道がまず最も重要であると考えた政府は、日本縦貫鉄道の先駆けとして、全てが英国式のこの鉄道を開通させたのである。関西に於いても、同7年(1874)大阪ー神戸間、同10年(1877)には、大阪ー京都間と、明治維新の廃藩置県にともなう旧大名などの禄の買上げで財政的には苦しかったが、どうにか二区間だけは開通させることができたが、縦貫鉄道という初期の目的にはほど遠く、早くも自力による建設は断念せざるを得なくなった。政府が、何故、それ程までに鉄道建設に熱を入れたかという理由として考えられることは、地方の産業的発展にもとづく近代的交通手段としてよりは、むしろ、帝政ロシアの南侵に備えての開拓地北海道との連絡路の確保という軍事的必要を痛感していた点であろう。したがって、当時、まだ、政治的、経済的未発達の状態にあっては、国防上の見地からも、鉄道による中央集権体制を確立して、それを国家の支配の下におくといういわゆる国有主義的原則が強く主張されたとしても、至極当然のことである。しかも、国家の手によるその鉄道建設が、財政難から実現不可能であるとすれば、初期の目的を一日も早く達成するためには、不本意ながら、かねてより、民間から強い要望のあった民営鉄道の建設を認可し、その意図を官民一体となって実現せざるを得ないと考えたのである。
 かくして、同14年(1881)には、新橋ー横浜間の開通以前から申請の出されていた日本鉄道株式会社の東京ー青森間の鉄道敷設が認められた(正式には、東京(上野)ー大宮ー高崎間がこの時認められ、同17年(1884)に大宮ー青森間が認可された)。日本鉄道は会社とは言っても、上記のような理由から、あらゆる点で、準国営的性格をおび、多くの特権を与えられていたので、国家に手厚く保護された一個のお役所的な特権会社としての性格を持っていた。とは言え、政府がそれ迄とりつづけてきた幹線国有の原則からはみ出た例外的存在とみることができる。
 一刻も早く、北から南に至る一大幹線の建設を願っていた政府は、ひきつづいて、明治21年(1888)には、山陽鉄道会社(現在のほぼ山陽本線にあたる)九州鉄道会社(同じく鹿児島本線)に対しても建設を認可した。これらの会社が一応の成功をおさめたこともあるが、それと前後して、明治19年から22-3年にかけて全国的な鉄道建設ブームを迎えた。しかし、その直後、日本全国をおそった恐慌は、一時的に建設の気運を低下させはしたが、同24年(1891)には、営業キロ数に於いては、国営の885キロに対して、民営は1875キロと、飛躍的な発展をとげ、全国的に鉄道網が張りめぐらされるようになった。翌25年(1892)政府は、鉄道施設法で、国内の幹線は国営、支線は民営という基本構想を明らかにしたが、財政的な理由から、民営幹線を買収するまでには至らなかった。しかし、つづいておこった日清戦争によって、政府は財政を立て直し、民間にあっては、再び、鉄道建設がブームとなった。そして10年。経済的蓄積を背景に戦われた日露戦争にも辛うじて勝利をおさめた政府は、国防上の理由及び幹線鉄道の規格的統一の必要から、同39年(1906)鉄道国有法を制定して、日本鉄道以下17の民営幹線鉄道を買収、ここに初期の目的は実現した。以来、民営鉄道は一地方の交通を目的とする場合に限って認められ、国は地方の中小鉄道企業の発展を助成し、国有鉄道の足りない部分を補足させるにとどめ、あわせて、国家資本の節約をはかるという政策をうちだした。この結果、国営路線は一挙に6,000キロを越えるに至り、一方、民営鉄道は、それまでとは性格を異にし、短距離、小規模の郊外鉄道(Suburban railway)又は都市間連絡鉄道(Interurban railway)として、生きのびるべく余儀なくされた。そして、日露戦争後の好景気と産業革命にともなう、人口の都市集中化に助けられたこともあって、まざましい躍進をつづけ、昭和の初期までに、東京、大阪など大都市を中心に、ほぼ、現在の路線を確保するに至った。
 日露戦争に20億円近い国費を投入して、その結果獲得した南満州の鉄道は、車輛、地上設備など、あらゆる面で荒廃しており、加えて、沿線は未開発、海港にも不便、鉄道にとって重要な炭鉱にも遠いという具合に、その価値は、経済的にも未知数であった。しかし、わが国は、これを経営するため、明治39年(1906)南満州鉄道株式会社(満鉄)を設立(半官半民資本)、本格的に大陸経営をこころざしたのである。そして、日露戦争で大国ロシヤを打ち破ったという国民的な意気と、全国的な支援が、未開地の開発と産業の発達、及び移民の輸送、傍系会社(鉱工業、農林業など)の発展などの好循環を生み、経営は順調に軌道にのった。昭和6年(1931)満州事変が勃発すると、「鉄道は兵器なり」の言葉通り、軍部の一翼として、軍需輸送に全面的に協力し、大車輪の働きをした。満州帝国の創設に際しては全国有鉄道の経営をまかされ、更に経済工作にも参加協力するところとなり、満州国内の全交通を掌握し、各種重要産業の実施期間としての地位を固め、ますますその勢力圏を拡大していった。
 更に、朝鮮(明治32年、京城ー仁川間開通)、樺太(明治45年、縦貫鉄道完成)、台湾(大正2年、縦貫鉄道完成)と、鉄道の海外進出はつづき、その背後では軍部による大東亜戦争への準備が着々と進められ、戦争に勝ち抜くためには、もはや鉄道は不可欠の要素とみなされるに至った。こうして、わが国の鉄道は、終戦まで、軍国主義に彩られながら、泥沼へと踏み込んで行ったのである。
 昭和20年(1945)わが国は、敗戦という、かつて、経験したことのない大打撃を受け、国土は荒廃した。鉄道も又、例外ではなかった。その立て直しとして同23年(1948)日本占領軍最高司令官Douglas MacArthur(1880-1964)の勧告を受け、日本の国有鉄道は、日本国有鉄道法に基づく、独立採算性の一公共企業体として再建され(昭24.6.1)今日に至っている。
 今回は本館の所蔵する図書のうちから鉄道に関するものを展示した。なお、目録中、4と48は去る昭和36年7月の図書展(題「交通」)に於いて、すでに展示されたものであるが、今回、再び展示したことをお断りしておく。
 

 目録中、明は明治、大は大正、昭は昭和、国鉄は日本国有鉄道の略。
◎ 歴史
1. 日本国有鉄道百年史  機キ供ァ々馘粥‐44-5
2. 日本鉄道史  上.中.下. 鉄道省 大10
  明治5年の開通から50年目に当たる記念出版
3. 写真で見る国鉄90年  国鉄 昭37(付 国鉄事業報告書、昭36年度)
4. 日本鉄道創設史話  石井 満著 法大出版局 昭27
5. 日本鉄道請負業史 ー明治篇ー  鉄道建設業会 昭42
6. 青函連絡船五十年史  国鉄青函船舶鉄道管理局 昭32
7. 国有10年 ー本邦鉄道国有後の施設並成績ー  鉄道省 大9
8. 国有鉄道震災誌  鉄道省 昭2
9. 呉と鉄道 ー呉駅から見た史的現状分析とその対策ー  昭30
  駅の消長は、即、その都市の盛衰、変転につながる。軍港呉の鉄道の歩みを国鉄駅からみた歴史
10. 東京地下鉄道史  乾.坤. 東京地下鉄道株式会社 昭9
    昭和2年12月30日 日本最初の地下鉄が、上野、浅草間に開通
11. 国有鉄道国際連絡運輸史  鉄道省運輸局 昭12
  日本とヨーロッパ、さらには世界各国をそれぞれの国鉄で結ぼうという遠大な計画は実際には、第一次大戦によって実を結ばなかった。しかし、東京発モスクワ行などという乗車券は購入できたという。
12. 日本鉄道資料要覧  横川四郎、青木一郎編 鉄道書院 昭10
  明治3年、工部省に鉄道寮ができて以来十数年のいわゆる鉄道創設期に於ける官私鉄道の記録。
13. 10年のあゆみ ー創立60周年ー  鉄道技術研究所 昭42
 
◎ 理論・研究
14. 鉄道統計研究 ー我国鉄道の経済的観察ー  瓜生卓爾著 鉄道生活社 昭4
15. 国鉄 ーその財政的構造  石川達二郎著 交通日本社 昭42
16. 日本鉄道新論  瓜生卓爾著 ダイヤモンド社 昭18
  昭和18年 大東亜戦争に勝つための国鉄の重要性についての論著。巻末の論文「戦力増強と貨車増備問題」は興味深い。
17. 陸上及空中交通論  大槻信治著 巖松堂 大11
18. 交通機関と交通政策  河津暹著 有斐閣 昭14(経済政策体系 第7巻)
  鉄道は国有、私有いずれがのぞましいか等。
19. 旅客事務の研究  川西実夫著 鉄道教育会 昭13
  旅客運賃、急行料金、寝台料金の外に今ではめずらしい入浴料金などの規定がある。
20. 鉄道運賃論  国吉省三著 文雅堂 大13
21. 鉄道経済論  国吉省三著 文雅堂 大12
22. 経済再建と鉄道電化  国鉄審議会電化委員会 昭24
23. 鉄道経営の理論と実際  佐藤雄能著 同文館 昭4
24. 都市及電気鉄道  坂本陶一著 宝文館 大4(交通論 第3巻)
25. 本邦鉄道の社会及経済に及ぼせる影響  上.中.下.附図 鉄道院 大5
26. 帝国鉄道政策論  中川正左著 鉄道研究社 昭3
27. 鉄 道 論  中川正左著 巖松堂 大10
28. 最新鉄道論(改版)  中川正左著 日本交通学会 昭12
29. 日本国有鉄道と欧米鉄道との比較  国鉄 昭38
 
◎ 海外進出
30. 開拓鉄道論  上.中.下. 伊沢道夫著 春秋社 昭和12〜3(鉄道交通全書)
31. 南満州鉄道株式会社三十年略史、付満鉄所管鉄道略図  満鉄 昭12
32. 鉄路総局概要  鉄路総局 大同2(昭8)
    満鉄営業開始時における概要。
33. 満蒙鉄道特定運賃制定方に関する建議書(写)  大連商工会議所 昭7
34. 満州事変と満鉄  満鉄 昭9
35. 台湾鉄道史  上.中.下. 台湾総督府鉄道部 明43〜4
    清国時代から日清戦争後の日本統治の明治44年までの歴史。
36. 支那の鉄道  鉄道大臣官房外国鉄道調査課 大11
37. 朝鮮鉄道史機 …鮮総督府鉄道局 昭4
 
◎ 外国事情
38. 統計上より見たる米国鉄道  鉄道省運輸局 昭10
39. 仏国鉄道の改組並に運輸業の統制  鉄道省運輸局 昭13
  フランス鉄道史と1937年のChautemps内閣による財政再建のための組織がえによる新制度の概要。
40. ソ連邦の交通  鉄道省運輸局 昭15
41. 独逸に於ける交通事情及び交通政策  東亜研究所 昭18
42. 独逸国有鉄道に於ける従事員養成制度  ブルーノ・シュワルツエ著 前田陽之助 他訳 運輸通信省鉄道総局業務局 昭18
  原著:Bruno Schwarze. Die Personal-Ausbildung bei der Deutschen Reichsbahn. 1928
43. 欧米諸国の鉄道と交通政策  国鉄外務部編 昭43
44. 欧米諸国の最近の鉄道経営について  国鉄 昭44(外国交通調査資料別冊)
45. 各国に於ける鉄道電化の趨勢  鉄道省運輸局 昭4(外国鉄道調査資料特刊)
46. 世界に於ける最近の高速鉄道  大阪市電気局 昭9
  大勢の乗客を一時に、しかも迅速に目的地に送り届けるのが都市交通の特質だという。諸外国の状況は・・・・
47. 米国鉄道に於ける賃金と労働問題  上、下 運輸省鉄道総局業務局貨物課(国際) 昭24
  下巻の出版は昭24.6.1の日本国有鉄道成立以後で同渉外局業務局課(国際)の出版。第一次大戦後、とくに1929年の経済恐慌期から1946年までの米国鉄道の全貌。
 
◎ その他(私鉄史も含む)
48. 鉄道辞典  上、下 国鉄 昭33
49. 日本全国鉄道線路実粁程  鉄道省 昭12
50. 鉄道読本  石井 満著 日本交通学会 大15
51. 昭和4年中出版外国鉄道調査資料国別総目次  鉄道省運輸局 昭4(外国鉄道調査 資料第3巻第12号附録)
52. 地方鉄道軌道一覧  社団法人鉄道同志会 昭16
53. 鉄道略年表  国鉄 昭37
54. 日本私有鉄道史研究 ー都市交通の発展とその構造ー  中西健一著 日本評論社 昭38
  明治39年の鉄道国有法が、私鉄にどのような影響を与え、どのような経営変換を強制するに至ったか。第1部、国有化以前、第2部、国有化以後のそれぞれの歴史と問題点。
55. 鉄道同志会史  私鉄経営者協会 昭31
  「鉄道同志会は鉄道及び軌道事業者相互間の連絡を図り、それらの事業の改善発達に必要なる諸般の事項を研究し、その実施に努むることを目的として大正2年2月2日に創立せられたものである。」(同書「鉄道同志会史編纂について」より)
56. 阪神急行電鉄二十五年史  阪急 昭7
57. 南海鉄道発達史  南海 昭13
58. 京王帝都  ダイヤモンド社 昭43
59. 京成電鉄五十五年史  京成電鉄 昭42
60. 最近10年の歩み ー創立70周年記念ー  京浜急行電鉄 昭43