(展覧目録第78号)
装釘に関する図書展目録
 
 日 時  昭和42年2月8日(水)、9日(木) 各12時から16時まで
 場 所  東北大学附属図書館会議室
 
まえがき
 装釘とは、製本の技術をいう。大別して、一定の大きさの料紙を長くはぎ合わせて巻いた巻子と、折り重ねて綴じた冊子との二つの形式がある。日本では、奈良朝までは巻子本(巻軸)の形式をとっていたが、平安朝初期から冊子本(策子、草子、葉子ともいう)の形式が並び行われるようになった。巻子は、芯になる軸や表紙・打圧竹(ひょうし竹)・紐などに趣向が凝らされる。冊子は、折り目の重ね方や綴じ方でいろいろの様式に分かれる。一番多いのは、料紙を二つに折って重ね、折り目でない方を絲で綴じた袋綴りであるが、日本では糸は一本取りで、縦一本、横四本に綴じるのに対して、中国では細線二本どりで、綴広(綴じる部分の巾が広い)なのが特色である。朝鮮では太線一本どりで、横は五本に綴じる。中国の清朝には、康煕綴じと呼ばれる上下の角を人型に綴じる様式が起った。更に、綴じた部分の上下の角を包んだり(包角)、全体を包んだり(包背装)する事もある。表紙は布や紙で趣向を凝らしている。中国では、蝋引の紙を用いる事が多い(蝋宣表紙)。書名(外題)は表紙にじかに書く事もあるが、別紙に書いて貼付する事が多い。これを題簽という。以下に特色のある諸例をあげてある。
 
(1)巻子本
日本
○ 無軸
1. 「三好流半弓製作書」 三好門左衛門尉伝 伝書(正徳5記) 表紙(菊花草模様)
  外題(墨書) 発装 経紐
○ 撥型軸
2. 「仏説憂填王経」 晋釈法炬訳 天平時代写 紐なし 朱塗木軸
3. 「大般若波羅密多経」 唐釈玄奘訳 法隆寺虫喰経 原装
○ 白木軸
4. 「新撰宿曜経」巻第二 釈安礙撰 平安朝中期写 原装 孤本
○ 金属軸
5. 「大般涅槃経」 表紙(藍色) 見返し(銀地金模様) 経紐 露(露花つゆ)
○ 象牙軸
6. 「摩訶般若波羅密多経」 [後秦釈鳩摩羅什訳] 香染紙経 原装
○ その他
7. 「松山坊秀句」 松山玖也自筆 改装 露の代り角を用う
8. 「春聞日記」 43巻 後嵩光太上天皇辰筆 複製(昭和7) 題簽(覆紙付)
  発表 経紐 天地両耳器付
中国
○ 軸物
9. 「西夏碑」 拓本(宣統2 在涼周時拓) 題簽(壬申=民国21年 1月仭千記)
 
(2)冊子本
日本 
○ 折本
10. 「金蘭英」 原本
○ 粘葉綴(ひろげた形が胡蝶の風にひらひらするのに似ているので胡蝶装とも言う)
11. 「景徳伝燈録」 30巻 宋釈道原編 宋楊億等刪定 貞和4年京都東山建仁天潤 菴刊 江月禅師旧蔵書
12. 「御迎船木偶図会」 暁鐘成(木村兼葭堂)撰 松川半山画 旧邦亭琶水校閲 弘化3
印 原題簽 丹表紙
13. 「心月輪秘釈」 釈覚鑁撰 正保4刊 高野山往生院宝蔵院開板
14. 「日本国見在書目録」 藤原佐世等勅撰 複製(大正14)(原本 東京帝室博物館蔵 室生寺旧蔵書)
15. 「大広益会玉篇」 30巻5冊 梁顧野王撰 泰定二年本の五山版(粘葉包背装を襯紙を入れて袋綴に改装したもの、改装は慶長前と鑑せらる) 原題簽 刻工名
16. 「粘葉考」 二冊 田中敬撰 昭和7 上(大和綴) 下(胡蝶装)
○ 四ツ目綴
17. 「江戸六組 飛脚問屋書留」 2冊 控本 文化頃 麻糸綴 原装
○ 大和綴
18. 「知行取付帳」 4冊 扣本(寛文10−享保14 上総国望陀郡 海上郡記録) 原装
19. 「謡秘伝書」 観世左近入道黒雲斎 安井有兵衛尉伝 原本 (寛永4記)
○ [大和綴]
20. 「英吉利単語篇」 開成所編 慶応2刊 原題簽付 書背布製
21. 「住吉大社御文庫貴重図書目録」 大阪書林御文庫講編 昭和8 (打抜綴)
22. 「水江物語」 中島[広足] 天保2序刊
○ 袋綴
23. 「華嶽志」 8巻首1巻 清季榕編 光緒9補刻 原題簽(赤布) 表紙(蝋宣黄色) 康煕綴 紅包角 原帙
24. 「漢渓書法通解」 7巻5冊(第6冊欠) 文政5序刊 唐紙刷 康煕綴
25. 「唐宋八家文読本」 30巻3冊 清沈徳濳 頼山陽書入 明朝綴 包角 表紙(布)
 うす葉
26. 「平山堂図志」 11巻4冊 清趙之壁編 官板 天保14 うす葉
○ 包背装
27. 「歴代古人像贊」 3巻 鄭振鐸編 複製(成化11刊本の1958影印) 粘葉綴
28. 「訪餘録」 島田翰撰 大正10 新製包背装
○ 金 金襄 玉(金襄はふちとるの意、襯紙の中に細長い紙を入れて厚みを補う)
29. 「雷峯塔伝奇」 4巻8冊 岫雲詞逸改本 康煕綴
30. 「崑山殉難録」 10巻4冊 明曹夢元撰 写本 明朝綴
○ 大福帳
31. 「薬種積仲間諸用覚帳」 仙台積仲間当番 原本(嘉永4正月〜安政6) 原装 虫損
○ 横本
32. 「都花月名所」 秋里籬島 寛政5 うす葉
○ 表紙のいろいろ
33. 「伊勢物語」 2冊 中院通勝訂 慶長13年活字版 嵯峨本
34. 「如是観、太尉賞雪、冥判到任、滑子拾金」 各1冊 清内廷写本(5色) ,蓮嶇∋欄旦隋廚如嵌掌鳥辰」 △蓮峩睨澣」の一節で「一刻十分」 は「牡丹亭」中のもので「二刻十分」 い蓮峪宛亀」中のもので「一刻」の演出を要することが前書してある。何れも昆腔 表紙(布) 明朝綴
35. 「欽定国朝詩別裁集」 32巻12冊 清乾隆帝定 清沈徳濳編並評 朝鮮表紙
36. 「□源系譜紀略」 李太王7年序刊 原装 天子の諱を紅布で蔽う
37. 「咸豊二年平安道中和府王子式帳簿」 原本 原装
38. 「不動霊験現過思廼柵 一名旭立帯」 柳園種春撰 春暁斎政信画 文政8 原装 原
題簽 副外題つき
39. 「白雪斎詩集」 明季言恭撰 明胡応麟編 宝暦3 見返がしゃれている 原題簽 柳里恭の書
○ 帙のいろいろ
40. 「五色類簒」 5冊 村田了阿編 写本 黄篇(表紙・綴糸・蔵書印皆黄色)
  青篇(同上青色) 赤篇(同上赤色) 黒篇(同上黒色) 白篇(同上白色)包布も以上五色に染めてある(但し色彩の紛らわしいのもある) たとう(布製)
41. 「周易通」 10巻 清浦竜淵撰 康煕10序刊 鹿島清兵衛(雲煙家蔵書記)の蔵書印
あり 夾板 (日本)
42. 「何氏家譜」 清何曾禧撰 光緒17序刊 何肇基の印あり 原題簽付 夾板(中国)
43. 「日講易経辞義」 18巻首1巻 清牛鈕等奉勅撰 康煕22序刊 原題簽 原帙(布製)
44. 「燉煌出土十誦比兵尼波羅提木又戒本」 西本竜山解説 複製(昭和4)康煕綴 紙帙(たとう)
45. 「南華真経」 10巻6冊 周荘周撰 晋郭象註 唐陸徳明音義 明版 朝鮮帙
○ その他
46. 「満州実録」 複製(民国) 絵入本 (満州本複製)
47. 「求闕斎日記類鈔」 王啓原編 光緒2 (漢籍の西洋人装釘)
48. 「日本文脈」 3冊 橋本博撰 昭和12-13 (仏国パリの萬国博覧会に日本出版物の代表として出品されたもの 超豪華版)
○ 参考文献
49. 「表具之事」 写本 (他に飾物等を図解す)
50. 「表具之書」 写本(文久2写) 挿画彩色(幅の表装)
51. 「染コウ及治書法」 後魏 賈思キョウ撰 「斎民要術(532ー544中)雑説第30(他人の作)(装コウ即ち表具の語の典拠と言われる)」
52. 「和漢装コウ志」 松井規撰 写本(大正写)
53. 「装綴」 田中敬撰 昭和8(「汲古随想」の中)(図書の形態、さうてい、字義考 装綴談双からなる)
54. 「ヒョウ具のしをり」 山本元撰 昭和2(改修版)(掛物、襖、屏風、その他の仕方を説く)