(展観目録第75号)
神宮神社展目録
 
 日 時  昭和41年11月9日(水)、10日(木) 各12時から16時まで
 場 所  東北大学附属図書館会議室
 
はじめに
 明ほのや松に春たつ風の音も心そすめる嶺の神垣(石清水社法楽連歌−牡丹花肖柏)
 法楽連歌は法楽和歌にならったもので、宗祇禅師が文明3年(1741)三島社前で賦した千句和歌が現在知られている連歌の最古といわれる。その後大社の社頭や宮中で行われ、室町末には北野社や水無瀬社の連歌は恒例の歌会であった。したがってその歌集も多く現存しているが、神社におけるこの種文芸は往古からひきつづき行われており、神を中心としたわが国では文事ばかりでなく、生活のすべてがここから発達したのであった。
 今回はこうした中から発達した諸文芸や一般神社に関する館蔵文献中から若干を陳列して再認識に資したいと思う。
 
目   録
○ 神社一般
1. 神社本義 田中義能 大正15
2. 伊勢神宮と神社 鈴木暢幸 大正8
3. 日本お宮物語 岩谷小波 明治45
4. 神社古図集 日本電報通信社出版部編 昭和17
5. 神社小志叢74種 刊本
  諸社縁起の刷物を集む
 ○ 仙府神社仏閣 来暦集 写本(享和2(1802)、黄台主人写)

6. 官社祭神記2巻 可部赤邇 明治8
7. 官社(神社)祭神考証 後醍院真柱等奉命集 写本
8. 神宝古図2巻 写本(延徳本の写)(巻子本 彩色)
○ 建築
9. 神社仏閣地割絵図25枚 写本(文化7(1810)河合新助写)
10. 官社地割 大工、嘉平次 [原本](巻子本)
11. 神社ひな形 引頭市右エ門 稿本(寛保3(1743)記)
12. 神社扁額集 写本(登米伊達家文書中)
13. 提秤(ちき)勝男木の起 唯一作、七面作、棟上具 北斎画 (北斎漫画8)
14. 鳥居の研究 根岸栄隆 昭和18
15. 鳥居雛形 佐藤則正 原本(巻子)
○ 伊勢神宮
16. 伊勢神宮 江見清風 (日本宗教大講座17)
17. 伊勢太神宮御宝物図 写本(嘉永2(1849)写)(巻子 彩色)
18. 伊勢太神宮領図 写本(彩色)
19. 外宮御造営地割図(下欠1巻) 原本(附 御鋳金物 名越逸作・安見長二郎書上)(巻子)
20. 外宮四至之図(以一分為一丈) 写本(彩色)
○ 遷宮
21. 神宮式年御遷宮始前後諸祭式 神宮司庁編
  御遷宮は藤原宮時代の第1回から昭和28年で第59回。20年毎に行われてきた。
22. 皇太神宮遷宮祭典図 神宮司庁編 昭和8(巻子 彩色)
23. 豊受大神宮遷宮祭典図 神宮司庁編 昭和8(巻子 彩色)
24. 寛政遷宮物語3巻 荒木田末隅 寛政2(1790)序刊
 ○ 伊勢大神宮御遷宮之図 英一峰画 刊
○ 参宮(伊勢参宮 伊勢詣)
25. 神詣伊勢道之記 写本(末尾欠 文化15年(1818)2月28日、小諸藩士木俣本蔵等の旅行記。春めくや人様々の伊勢参り(荷兮)、参宮は春に多い)
26. 伊勢参詣之事 写本(伊勢参り年の善悪、生年、禁忌を述ぶ)
27. おかけまうで日記 本居太平 明治36(本居太平全集)
28. 抜け参りの研究 吉岡永美 昭和18
  抜参りとは御蔭参り(伊勢皇大神宮の神恩即ち御蔭を感謝する参宮)で、慶安3、宝永2、明和8、文政13、慶応3年等に大群衆の参宮があった。殊に宝永には370万人余の参詣者があったという。爾来61年目にこの御蔭年があったという。本書の「抜け参り地方別略図」の説明に「特に注意すべき事は抜参の事、お祓いの事が東北地方には最初から最後までついに一度も及んでいないことである。これも幕末維新風雲の祭における東北地方の態度と思い合わせて成程と首肯せられる所である」とある。仙台には荒巻とつつじが岡の両神明社あり、神主平野伊勢は仙台暦を編製し伊勢半で出版した。
 ○ 宝永2年御影参流行御奇瑞記録並絵図(尚古造紙挟)
29. 参宮の今昔 大西源一 昭和11
30. 五十年後の伊勢参宮 小林四五百 昭和8
31. 伊勢大々神楽起原 写本(外3種合綴)
  伊勢神宮への信仰を中心として結ばれた伊勢講(神明講)の起原は未詳であるが、室町末期から伊勢参りが民間に流行し、江戸時代には一般化して全国到る処の村々に講が結ばれた。その費用や神楽奉納費を醵金したので、伊勢大々神楽講(伊勢大々講)とも呼ばれた。
32. 僧徒の大神宮崇拝史 梅田義彦 昭和19(僧尼参拝図は(2)の179頁にある)
33. 諸国定宿帳 松屋源助 文久2(1862)
○ 文芸
34. 大神宮御法楽千首和歌 [吉田兼煕等] 元禄14年(1701)9月21日興行 写本
35. 新補伊勢歌舞伎年代記 吉田暎二編 昭和8
  江戸、上方、名古屋に次いで、伊勢、宮島が歌舞伎繁盛のところ。特に伊勢は上方役者の登竜門で、宮島より盛のようであった。その起原は寛永頃といわれている。
36. 伊勢音頭恋寝刃 近松徳三 明治45(脚本傑作集下)
  四幕七場 寛政8年(1796)7月25日、大坂、藤川八蔵座初演
37. 敵討噂古市三編 柳水亭種清撰 梅蝶楼国貞画 安政4(1857)
  古市三大楼(油屋、備前屋、杉本屋)の一なる杉本屋のお梅を中心とした合巻。
○ 伊勢海道銭懸松二巻 築地全交撰 五湖亭貞景画 文政13(1830)
  勢州豊久野の銭懸(千貫)松(豊受大神の行宮跡)に附会した仇討物(合巻)
○ 「こくせんや」(鳥居清満画 黒本)に、ははおや太神宮のおはらいをささげ和藤内に
力をそう絵がある。
38. 伊勢音頭二見真砂 笠菊斎千雀 写本(文政5(1822)川村恕右エ門写)
  色絵鏡以下70番を収む。
39. 御蔭参詣詩三巻 金仁 文政13(1830)
  題簽に「文政御蔭」と角書してあるように文政13年(天保元年)、阿波の国から始った御蔭参りを、絶句体、七言体、五言体の漢詩(狂詩)で表現したもの。