(展観目録第72号)
「たばこ」展目録
 
 日 時  昭和41年8月10日(水)、11日(木) 各12時から16時まで
 場 所  東北大学附属図書館会議室
 
はじめに
 (1)たばこほす山田の畔の夕日かな。(2)和漢の忠義たばこ売り(赤穂義士の変装をさす)
さかな売り(春秋時代楚の范蠡をさす)(3)煙草のまねば股引はいらね(陸前の諺)。
 (1)は其角の句であるが、この他「ほととぎす煙草に腹のふくれけり。」(希因)や「夜の
香や煙草寝せおし庭の隅」(大祇)等々の俳句があり、(2)の千柳も、(3)の諺も、いずれも多くの句が人口にのぼっているし、たんに「たばこ」と云えば、火事とか、盗人とか、高級私娼とか、生意気な中学生とか、裏口へ廻るとか、を意味した隠語ともなっている。それ程大衆化しているのが煙草である。この煙草はいうまでもなく、もとは舶来品で、元和元年に始めて種子が長崎へ輸入され、やがて栽培・製造されるに至ったという。その後は異常な勢いで全国にひろまり、しばしば禁令も命ぜられたが、もうその頃にはどうしようもない程一般民衆の間に浸透していた。したがっていろいろのたばこやそのいれもの、きせる、たばこぼん等が発達し、徳川中期になると江戸には多数の煙草問屋があらわれた。かくて国民生活の各方面にしみこんで、いろいろな生活様式を生み出しながら今日に至った。今回はこのなかば生活必需品にもなった煙草につき、館蔵の資料中から新古の文献を展示して、今日の盛行をしのぶこととした。
 
目  録
○ 一般
1. 煙草(世界大百科事典18) 1957
2. たばこ読本 煙草耕作組合中央会編 昭和24
3. 世界たばこ報告集 世界たばこ会議編 昭和28
4. 日本煙草経済論 服部満江撰 昭和32
5. 煙草説 鶴涙隠士編 (東遷成基3)
6. 煙草志 (□庵筆記2)
7. □録4巻 大槻茂質訳 寛政9(1797)序 (絵入)
8. 烟草一覧 丹波修治等述 溝口月耕等画 明治5-11
9. 薩隅煙草録 鹿児島県編 明治14(挿画彩色)
10. 穀物」烟草」菜種」集談会報告 大日本農会編 明治15
11. 煙草録 清 □逢椿、顧祿編 (嘉慶板翻刻)

12. 本邦煙草病害論 専売局編 昭和9
○ 歴史、その他
13. 煙草のはじまり (老翁談3)
○ 金絲烟のはじまり (源貞氏耳袋七87)
○ たばこの始 (其蜩翁草5)
14. 寛永の頃 たばこ禁制 (源貞氏耳袋四51)
15. 煙草制禁(元和2年10月3日、安藤対馬守禁令) (三省録後編4)
16. 喫煙禁止法令 穂積陳重撰 大正9(法窓夜話)

17. 日本最古の葉煙草二枚発見 河北新報昭和29.1.14
18. 仕入田葉粉売人渡帳 原本(表紙に大館姓とある)
19. 勧農煙草栽培録 佐々木忠綱編 梶島栄孝図 明治20

20. 煙草の一服一銭 (還魂紙料二下)
○ たばこの火 (似我蜂物語上31)
21. 女と烟草 柳田国男撰 昭和37(定本柳田国男集14)
○ きせる、たばこぼん等
22. 煙管、煙袋之図 近藤正斎撰(近藤正斎全集1「安南紀略稿」2)
23. たばこ吸煙図 小島潜撰(「漂船護送汐路」 巻子写本(文化4)
○ たばこ吸煙図 (「無人島漂到記」 巻子写本)
24. 豊太閤の煙管 山崎美成撰(提醒紀談5)(吸口に「水口権兵エ、天正5」、
 「水口久吉」の彫刻がある)
25. 烟具紙入類 喜多村信節撰(□庭雑考四)
26. 烟管図 間宮倫宗撰 安政2(1855)(銅柱銭録4)
○ 烟草具 大日本国産撮影(澳国博覧会出品写真)
27. 壺屋煙草入(わすれのこり下 写本)

28. 山東庵の京伝張り(煙管) 岡田村雄撰 大正5(紫草)
  「迷へば煩悩の胸をこがし、悟れば無常の憂を忘る 什□生者(コノ) おもひ草一吹の煙 江戸山東京伝」

29. 工商技芸 看板考 坪井正五郎編 明治20
30. 中野煙草 ヒーロー 巻煙草 煙草屋 煙管屋 幾世留屋各看板 杉浦丘園編 昭和1
5(看板図譜) 
○ 煙管乗り 宮武外骨撰 大正9(奇想凡想)
31. 大日本燐寸商標三冊
○ 文芸
32. 戯謝洞巖老恵金烟管二十韻 新井白石撰(閑田次筆四13)
○ 烟草詩 異名(可観小説22)
33. たばこ十首(聖泰百物語二29)
34. 狂歌烟草百首 橘薫(奇南楼主人)撰 弘化3(1848)
35. 滑稽四季の友二巻 山東京伝撰 歌川豊国画 文化7(1810)序
○ 曲亭一風京伝張三巻 曲亭馬琴撰 北尾重政画 寛政13(1801) (黄表紙)
36. 諸国名葉刻煙艸 章魚述 明治22 (引札文集)
○ 多葉粉の伽六巻 松平宗矩撰 写本