(展観目録第69号)
「歌麿」に関する図書展目録
 
 日 時  昭和41年5月11日(水)12日(木) 各12時から16時まで
 場 所  東北大学附属図書館会議室
 
展観の大要
 喜多(田)川歌麿は、宝暦3年(1753)に生まれ(生地は江戸とも、京都とも、川越ともいう)文化3年(1806)9月20日、54才(一に53)で世をさった。彼の作画期は安永
5年(1776)から卒年までの約30年間。初期の北川豊章(師の鳥山石燕の名、豊房の一字を与えらる)と称した頃から、その後の絵本等々に挿絵していた時期と、浮世絵画家(役者絵はかかず)としての活躍時代の二期に大別される。前期は狂歌師や戯作者との提携による挿絵が多く、狂歌名は筆の綾丸、俳名は石要(石燕より与えらる)画家名は石要(或はうた麿舎石要)、木燕、燕岱斎、紫屋。他に一窓主、挿絵中には「麿」「うた様」などしたが、天明2年(1782)以後は殆んど歌麿としている。そして忍岡に住んだ頃は忍岡歌麿とも、哥麿、うた麿とも称し、同4年(1784)頃は、板元の蔦屋重三郎方に寓し、蔦の本の歌麿と仮名したこともあったが、7年(1787)からは、喜多川歌麿と署している。然して後期、即ち寛政2年(1790)以後の錦絵時代に入るが、この期に婦女八相十品や婦人相学十体の美人画によって、その地位を定めたが、その錦絵に特殊な両面刷(難破屋おきた・高島おひさ)を創案した(百戯述略一に、ふきぼかし板木のことは安永3年(1774)石燕が、絵本鳥山彦に始めて工夫したという。この師にしてこの弟子ありか)。彼の特色は忠実な観察と写真に基ずく、理想美の表現にあり、且狩野派の筆触もあって、始めは美人画には不調和な点も見られたが、やがて独特な優雅な描線を画くようになり、その美人絵は、全く浮世絵の絶頂と称されるに至り、当時既に清商にその絵を求められ、今日不朽の名声を世界にはせている。この点からして彼の春宵秘戯の画は、また格別のものとされ、川柳にも「歌麿の毛がき彫師の泣きどころ」と詠まれた程である。寛政末期には、一の型に限り、主観にとらわれて行詰りを感じたところへ、絵本太閤記の挿絵によって、手錠の刑に処せられ、自尊心の強い彼に非常なショッキングを与え、遂にその画家生活を閉ずると共に彼の生命も終わったのである。
 
目   録
○ 雑誌
1. 浮世絵 第1-4号 昭和3
2. 浮世絵志 第6-9号 昭和4
3. 浮世絵新誌 第9-15号 昭和5-6
4. 浮世絵芸術 第2・3巻 昭和8-9
○ 浮世絵展観目録
5. 浮世絵歴史展覧会品目 小林文七編 明治30序
6. 浮世絵展覧会目録 米 エルネスト・エフ・フェノロサ述 小林文七編 明治31
7. 御大典記念徳川時代各派名作 浮世絵展覧会目録 報知新聞社編 昭和3
8. 浮世絵綜合展図録 東京浮世絵協会編 昭和7

9. 浮世絵入札目録 9冊
○ 浮世絵 大正9・14 ○ 浮世絵入札目録(山田馬輔先生御所蔵品)昭和3
○ 浮世絵目録 昭和4・5 ○ うきよ絵入札目録 昭和6
○ 浮世絵もくろく 昭和8・9 ○ 春峯庵什襲並某家所蔵品 浮世絵展観入札図録 
 昭和9
○ 一般
10. 新増浮世絵類考二巻 竜田舎秋錦撰 写本
  南畝の浮世絵類考に享和2年京伝によって同追考が加えられ、天保4年に続浮世絵類考が渓斎英泉によって編刊され、その増補が弘化元年、白雲堂月岑子によって編著、そして本書が慶応4年にできたという。それに新増補したのが次の書という。
11. 新増補浮世絵類考 本問光則撰 明治22
12. 浮世絵雑録二冊 (新聞切抜) (大正時代)
13. 浮世絵読本 吉田暎二撰 昭和14(高見沢版 限定1500部のうち671)
○ 伝記一般
14. 浮世絵師考 [ 小寺玉蔵 ]カ 撰 [ 原本カ ]
15. 日本美術浮世絵画家人名一枚 山本有所撰 明治25
16. 浮世絵師便覧 飯島半十郎撰 明治26
17. 本朝浮世絵名家詳伝 関根全四郎撰 明治33
18. 浮世絵師人名辞書 桑原羊次郎撰 大正12
19. 古今東西浮世絵数寄者総番附 一枚 美術日本社編 昭和13
○ 歌麿伝
20. 喜多川歌麿 吉田暎二撰 昭和37 (浮世絵入門)
21. 秘版 歌麿 歌麿研究会編 昭和28(日本浮世絵大集2)
22. 歌麿 エドワードデゴンクール撰 1904(欧文)
23. 歌麿 ジュリウス・クルス撰 1907(欧文)
○ 歌麿筆挿絵類
24. 狂言末広栄 山東京伝撰 うた麿画 天明6(1786) (黄表紙)
25. 絵本詞の花二巻 天明7(1787) (墨刷) (絵本)
26. 冠言葉七目莚記二巻 唐来参和撰 寛政元(1889) (黄表紙)
27. 絵本譬喩節三冊 天明9(1789)序 (絵本)
  本書も他の絵本と同様、その画題は何れも得意のモチーブで、何れも狂歌を伴い、一枚絵に見られない自然研究の最も魅力ある作(絵本の研究)といわれる。
  なお歌麿の絵本は、四季の花、年中行事の他は、全部耕書堂蔦重の出板というが、陳列本は寛政9年(1797)浪花明石屋の出板 つむり光等の狂歌人。 墨刷
28. 絵本吾妻遊三巻 奇々羅金鶏撰 寛政2(1790) (墨刷、狂歌絵本)
29. 御誂染長寿小紋三巻 山東京伝撰 享和2(1803)序 (黄表紙)
30. 吉原青楼 年中行事二巻 十返舎一九撰 うた麿筆 享和4(1804)(後印) (青楼絵本。極彩色)
31. 曾我糖袋 唐洲撰 (遊里本)
32. 石場妓談 辰己婦言 式亭三馬撰 (遊里本)
33. 相合傘 (洒落本)
34. 虫類画譜一帖 明治25(複製)(極彩色絵本)
  草花に昆虫を配し、虫に関する狂歌がそえてある。絵本の研究によると、歌麿は禽獣虫魚の四部作を予定し、禽部「百千鳥狂歌合」二帖(寛政2)と虫部「絵本虫撰」二冊(天明8)魚部「汗干のつと」一帖(寛政1)を出したが、獣部は遂に出なかったらしい。是らは何れも彩色で、特に虫撰は従来の浮世絵にない新しい試みをなした最初のもので、科学的写真主義、しかも芸術的な香の高いものであり、見る人をして絶賛せしめているという。
35. 聞風耳学問三巻 十返舎一九撰 (黄表紙)
36. 夫従以来記三巻 竹杖為軽撰 昭和3 (稀書復製会本) (黄表紙)
○ 浮世絵一般
37. 浮世絵内史 渋井清撰 昭和7 (浮世絵書誌)
38. 浮世風呂 やまと錦絵七冊 橋口玉葉編 大正6-7
39. 地本錦絵問屋譜 石井研堂 広瀬菊雄撰 大正7
40. 錦絵の改印の考証(一名錦絵の発行年代推定法) 石井研堂撰 大正9
○ 歌麿錦絵
41. 歌麿錦絵目録 [ 狩野亨吉撰 ] 原本
  六五の板元の商標をあげ、板元及び板元未詳のものを初代歌麿作とし、その他を二代歌麿作に区別し、大錦、小形、細絵に分記したもの。初代は大形一三五、小形四六を著録している。
42. 歌麿浮世絵集 日本浮世絵協会編 大正15
  歌麿没後121年に当り、第9回浮世絵展とし、彼の錦絵、絵本等103点を展観した際の図録
43. 歌麿名画揃五枚 明治36(臨写)

44. 錦絵三傑(清長、歌麿、栄之)の作品