(展観目録68号)
「源氏物語の影響」に関する古書展
 
 日 時  昭和41年4月13日(水)14日(木) 各12時から16時まで
 場 所  東北大学附属図書館会議室
 
まえがき
 更級日記の作者は、源氏物語によみふける楽しさを「后の位も何にかはせむ」と表現した。若い娘が、作中人物に我身をなぞらえて胸をときめかす様が偲ばれる。
 藤原俊成は、「源氏みざる歌読は遺恨の事なり」(六百番歌合冬十三番判詞)と述べており、源氏物語が、歌人にとって必読の書である事を示している。平安後期に源氏物語がいかに読まれたかの一例である。中世に入ると仏教思想によって文芸を批判する思想が生れ、源氏物語は特に秀逸な為、人に好色の道を勧める罪悪も深く、従って、作者紫式部は地獄に墜ちるだろうと言われるようになった。(宝物集巻四、今鏡作り物語のゆくへ、源氏一品経)そこで、紫式部を救う為に「源氏供養」という宗教行事が行われた。一方では学問研究の対象として源氏物語の註釈や評論がさかんになり、源氏学は近世に国学を振興させる基礎となった。このように、源氏物語は各時代を通じて大勢の人々に親しまれ、文芸や生活に多大の影響を与えたのである。
 
目  録

1. 源氏物語 写本(朱筆校訂本) 金蒔絵黒塗箱入
2. 源氏物語 写本(知恩院宮良純親王等写 附前田香雪の筆者鑑定書) 20冊箱入
3. 源氏物語(河内本) 昭和9複製 10冊
4. 源氏物語並附録 刊本(朱墨書入) 53巻附6巻30冊
5. 源氏物語 山本春正編 慶安3跋(富塚隆義書入) 54巻目案3巻 57冊
○ 源氏物語附光源氏物語系図 写本 54冊附一帖桐箱入

6. 源氏物語絵巻木版木習シュウ複製 川面義雄 昭和31複製 30枚桐箱入2箱
○ 源氏物語絵巻 徳川美術館 昭和11複製 絵15枚 詞書5枚一帙
○ 源氏物語絵巻(徳川本) 昭和27複製 写真60枚一帙
○ 源氏物語 模本 1巻
○ 源氏物語絵巻(益田本) 大正9複製 一軸桐箱入
○ 源氏物語畫巻 大正9複製 3巻附畧解 一軸箱入
○ 源氏物語絵巻(増田本) 昭和27複製 写真4枚一帙 
作り物語

7. 浜松中納言物語 (菅原孝標女 カ) 写本(校訂本) 4巻4冊
8. 前田本寝覚 (菅原孝標女 カ) 昭和8複製 二帙
9. 夜乃祢覚 (菅原孝標女 カ) 写本 5冊
10. 狭衣 附序目下紐系図 承応3 16巻16冊
11. とりかへはやもの語 写本 4冊
12. 蜑の苅藻物語 写本
13. 松蔭中納言物語 写本 1冊
14. 住吉物語 奈良絵本 3冊桐箱入
△ 享受史
15. 御物本更級日記附解説 菅原孝標女 藤原定家筆 大正14複製 二帖
16. 無名草子 群書類従(巻第312 物語部) 原刻本
17. 源氏人々の心くらべ 群書類従(巻第314 物語部) 原刻本
○ 伊勢源氏十二番女歌 群書類従(巻第314 物語部)
○ 百番歌合 群書類従(巻第313 物語部) 別名源氏狭衣歌合
18. 源氏物語竟宴記 群書類従(巻第315 物語部) 原刻本
△ 式部堕地獄説
19. 源氏物語願文 群書類従(巻第313 物語部) 原刻本
20. 賦光源氏物語詩 群書類従(巻第134 文筆部) 原刻本
○ 新勅撰集 巻第十釈教
  「紫式部のためとて結縁経供養し侍りける所に薬草喩品をおくり侍るとて 権大納言宗家」
○ 藤原隆信朝臣集巻下 釈教
 「はゝの紫式部かれうに一品経せられしにたらに品をとりて」
21. 今鏡 第四巻 前田本 尊敬閣 昭和14複製
  (但し第十つくり物がたりのゆくゑを国史大系にて呈示)
○ 康頼宝物集下 平康頼 (続群書類従)
  「マチカタハ紫式部カ夢ニ。虚言ヲ以源氏物語ヲ造シ故ニ。地獄ニ堕テ苦ヲ受タリト見ヘシ。故ニ早源氏物語ヲ破リ捨テゝ。一日経ヲ書テ□ヘシト云ケルトテ歌読ミ共集テ務ナシアヒタリシ也」
△ 註釈研究
○ 省略
△ 謡曲
22. 観世流 謡本 野宮 写本
23. 須磨源氏 刊本 文化3
24. 明和改正観世流謡本内百番 江戸出雲寺和泉掾 明和2
25. 装束附 (源氏供養) 写本
△ 連 歌
26. 源氏小鏡上 藤原長親撰 慶長活字版「古活字版之研究」附図283に同じ
27. 源氏小鏡 藤原長親撰 活字版 原装丹表紙「古活字版之研究」附図359に同じ
○ 連理秘抄 二条良基 (日本古典文学大系)
  「その上に、三代集・源氏の物語・伊勢物語・名所の歌枕、かやうの類を披見して、有ル興さまにとりなすべし」
○ さゝめごと 心敬 (日本古典文学大系)
  「八雲の御抄にも、稽古といへばとて、あながちに天笠もろこしの文をつくせにもあらず。万葉・古今集・伊勢物語などのうちなるべし。ふるまひの艶に言葉のけだかきは原氏・狭衣なり。」
28. 源氏国名百韻 続群書類従(巻第482 連歌)
△ 源 氏 香
29. 十□香之記 志野宗信伝 写本 2巻2冊
30. 香道秘伝書 建部隆勝 吉文字屋庄右衛門 寛文9刊
31. 香記 写本
32. 古代模様雛形 近藤清治郎編 明29
33. 源氏絵物語 豊国筆
34. 松雲模様輯 小川松雲 京 山田直三郎 明3-5
○ 夏山雑談 小野高尚(日本の遊戯 小高吉三郎著)
  「源氏香は五□なり、五□の内、一の香五包、二の香五包、三の香五包、四の香五包、五の香五包、合二十五包を内交て、何れなりとも其内五包をとり出し、香本より一包みづつたき出す。譬ば一二三四五皆かはりたる香ときけば、□如∨此図を名乗紙に書き・・・・・・如∨此ききたるおぼへ次第に図をつくれば自然と五十二の図出来るなり。」
△ 投扇の図
35. 投扇興仕方
36. 源氏品さため
△ 源氏絵
○ 古今著聞集 巻十一 (国史大系)
  「天福元年の春の此。院・藻壁門院の方をわかちて絵つつの具おほひありけり。大殿攝政殿女院の御方にぞおはしましける。一方にしかるべき女房達四五人ばかりにて日かつきには及ざりけり。先女院の御方の御方負させ給て。源氏絵十巻たえなる料紙にかきて。色々の色紙に詞はかゝれたりけり。」
37. 今様櫛□雛形葛飾為一画 江 西村屋与八角丸屋甚助 文政6 3冊
38. 花鳥山水図式 葛飾為斎画 東 稲田佐兵衛 明治14
39. 安斎随筆 伊勢貞丈 写本(朱筆書入本) 30巻 30冊
△ 源氏車
40. 古代模様 広益紋帳大全 甲斐山久三郎 明治24 3冊
41. 新増改正紋所帳 大阪しほや季助刊
△ 源氏雲
42. 傾城反魂香 巻中 近松門左衛門 刊本
43. 嬉遊笑覧巻三 日本随筆大成 昭和4
△ 箏曲
44. 生田流琴曲歌之海 石田猪十郎編
45. 四季源氏乙之曲 文化14写

46. 好色一大男 井原西鶴 天和2年板の覆刻 大正15
47. 偐紫田舎源氏 柳亭種彦 稀書複製会本
番外 源氏物語 その文学と美術 五島美術館 昭和39
  日本絵巻物全集一 角川書店 昭和33