東北大学附属図書館 夏目漱石ライブラリ


■9月26日


○昨夜始めて起き直つて食事。横に見る世界と竪に見る天地と異なる事を知る。食事うまし。夜に入つて元気あり。妻から失心〔神〕中の事をきく。失心〔神〕中にも血を吐いて妻の肩へ送れる由。其時間は三十分位注射十六筒といふ。 
(明治43年9月26日(月) 日記)
(『漱石全集』 第12巻)


※解説: 漱石は明治43年5月頃から胃の不調を訴え、長与胃腸病院で診察を受けた結果、胃潰瘍の疑いありと診断された。当病院に6月中旬から7月下旬まで入院し、8月6日には門下生・松根東洋城の誘いにより、静岡県伊豆修善寺温泉に療養のため出かけた。しかし修善寺温泉に到着後すぐに体調不良を訴え、病の床に就くことになり、8月24日の晩には大量の吐血をし、一時危篤状態に陥った。いわゆる「修善寺の大患」である。漱石は、10月10日まで修善寺に滞在し、帰京後は再び長与胃腸病院に入院した。「思ひ出す事など」は、帰京後間もない明治43年10月29日から『朝日新聞』に連載された随筆である。
※「漱石文庫」関連資料: 修善寺の大患日記
参考文献



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