東北大学附属図書館 夏目漱石ライブラリ


■9月12日


 学年は九月十一日に始まつた。三四郎は正直に午前十一時半頃学校へ行つて見たが、玄関前の掲示板に講義の時間割がある許で学生は一人も居ない。自分の聴くべき分丈を手帳に書き留めて、それから事務室へ寄つたら、流石に事務員丈は出て居た。講義はいつから始まりますかと聞くと。九月十一日から始まると云つてゐる。澄ましたものである。でも、どの部屋を見ても講義がない様ですがと尋ねると、それは先生が居ないからだと答へた。三四郎は成程と思つて事務室を出た。
(『三四郎』三の一)
(『漱石全集』 第5巻)


参考文献



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