東北大学附属図書館 夏目漱石ライブラリ


■8月22日


 雨は益降り続いた。余の病気は次第に悪い方へ傾いて行つた。(中略)東京の音信が雨と風と洪水の中に、悩んでゐる余の眼に始めて瞭然と映つたのは、坐る暇もない程忙しい思ひをした妻が、当時の事情を有の儘に認めた巨細の手紙が漸く余の手に落ちた時の事であつた。余は其手紙を見て自分の病を忘れる程驚いた。
(「思ひ出す事など」十)
(『漱石全集』 第12巻)


※解説: 漱石は明治43年5月頃から胃の不調を訴え、長与胃腸病院で診察を受けた結果、胃潰瘍の疑いありと診断された。当病院に6月中旬から7月下旬まで入院し、8月6日には門下生・松根東洋城の誘いにより、静岡県伊豆修善寺温泉に療養のため出かけた。しかし修善寺温泉に到着後すぐに体調不良を訴え、病の床に就くことになる。
※「漱石文庫」関連資料: 修善寺の大患日記
参考文献



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