東北大学附属図書館 夏目漱石ライブラリ


■8月21日


 今日からつく/\法師が鳴き出しました。もう秋が近づいて来たのでせう。
 私はこんな手紙をたゞ書くのです。永い日が何時迄もつゞいて何うしても日が暮れないといふ証拠に書くのです。さういふ心持の中に入つてゐる自分を君等に紹介する為に書くのです。夫からさういふ心持でゐる事を自分で味つて見るために書くのです。日は長いのです。四方は蝉の声で埋つてゐます。
(大正5年8月21日(月)久米正雄・芥川龍之介あて書簡)
(『漱石全集』 第24巻)





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