東北大学附属図書館 夏目漱石ライブラリ


■8月19日


其頃修善寺には北白川の宮が御出になつてゐた。東洋城は始終そちらの方の務に追はれて、つい一丁程しか隔つてゐない菊屋の別館からも、容易に余の宿迄は来る事が出来ない様子であつた。(中略)
 さういふ夜の事であつたか、又は昼の話であつたか今は忘れたが、ある時何時もの様に顔を合わせると、東洋城が突然、殿下からあなたに何か講釈をして貰ひたいといふ御注文があつたと云ひ出した。
(「思ひ出す事など」九)
(『漱石全集』 第12巻)


※解説: 漱石は明治43年5月頃から胃の不調を訴え、長与胃腸病院で診察を受けた結果、胃潰瘍の疑いありと診断された。当病院に6月中旬から7月下旬まで入院し、8月6日には門下生・松根東洋城の誘いにより、静岡県伊豆修善寺温泉に療養のため出かけた。しかし修善寺温泉に到着後すぐに体調不良を訴え、病の床に就くことになる。
※「漱石文庫」関連資料: 修善寺の大患日記
参考文献



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