東北大学附属図書館 夏目漱石ライブラリ


■8月18日


余は明け暮れ自分の身体の中で、此部分を早く切り取つて犬に投げて遣りたい気がした。夫でなければ此恐ろしい単調な意識を、一刻も早く何処かへ打ち遣つて仕舞たい気がした。又出来るならば、此儘睡魔に冒されて、前後も知らす一週間程寐込んで、しかる後鷹揚な心持をゆたかに抱いて、爽かにな秋の日の光りに、両の眼を颯と開けたかつた。
(「思ひ出す事など」八)
(『漱石全集』 第12巻)


※解説: 漱石は明治43年5月頃から胃の不調を訴え、長与胃腸病院で診察を受けた結果、胃潰瘍の疑いありと診断された。当病院に6月中旬から7月下旬まで入院し、8月6日には門下生・松根東洋城の誘いにより、静岡県伊豆修善寺温泉に療養のため出かけた。しかし修善寺温泉に到着後すぐに体調不良を訴え、病の床に就くことになる。
※「漱石文庫」関連資料: 修善寺の大患日記
参考文献



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