東北大学附属図書館 夏目漱石ライブラリ


■8月10日


 私は殉死といふ言葉を殆んど忘れてゐました。平生使ふ必要のない字だから、記憶の底に沈んだ儘、腐れかけてゐたものと見えます。妻の笑談を聞いて始めてそれを思ひ出した時、私は妻に向かつてもし自分が殉死するならば、明治の精神に殉死する積だと答へました。
(『こゝろ』百十)
(『漱石全集』 第9巻)


参考文献



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