東北大学附属図書館 夏目漱石ライブラリ


■7月30日


 私は稍ともすると机にもたれて仮寐をした。時にはわざ/\枕さへ出して本式に昼寐を貪る事もあつた。眼が覚めると、蝉の声を聞いた。うつゝから続いてゐるやうな其声は、急に八釜しく耳の底を掻き乱した。私は凝つとそれを聞きながら、時に悲しい思を胸に抱いた。
(『こゝろ』)
(『漱石全集』 第9巻)


『こゝろ』
参考文献



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