東北大学附属図書館 夏目漱石ライブラリ


■7月25日


 晩天子重患の号外を手にす。尿毒症の由にて昏睡状態の旨報ぜらる。川開きの催し差留られたり。天子未だ崩ぜず川開きを禁ずる必要なし。細民是が為に困るもの多からん。当局者の没常識驚くべし。
(明治45年7月20日(土) 日記)
(『漱石全集』 第20巻)



私は最後に先生に向つて、何処かで先生を見たやうに思ふけれども、何うしても思ひ出せないと云つた。若い私は其時暗に相手も私と同じ様な感じを持つてゐはしまいかと疑つた。さうして腹の中で先生の返事を予期してかゝつた。所が先生はしばらく沈吟したあとで、「何うも君の顔には見覚がありませんね。人違ぢやないですか」と云つたので私は変に一種の失望を感じた。
(『こゝ』三)
(『漱石全集』 第9巻)


参考文献



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