東北大学附属図書館 夏目漱石ライブラリ


■4月15日


 強ひて説明せよと云はるゝならば、余が心は只春と共に動いて居ると云ひたい。あらゆる春の色、春の風、春の物、春の声を打つて、固めて、仙丹に練り上げて、それを蓬莱の霊液に溶いて、桃源の日で蒸発せしめた精気が、知らぬ間に毛孔から染み込んで、心が知覚せぬうちに飽和されて仕舞つたと云ひたい。
(『草枕』)
(『漱石全集』 第三巻)


参考文献


Copyright(C) 2009 Tohoku University Library 著作権・リンクについて