東北大学附属図書館 夏目漱石ライブラリ


■3月15日


 日英同盟以後欧州諸新聞の評論一時は引きもきらざる有様に候ひしが昨今は漸く下火と相成候処当地在留の日本人共申合せ林公使斡旋の労を謝する為め物品贈与の計画有之小生も五円程寄附致候きりつめたる留学費中まゝ如斯臨時費の支出を命ぜられ甚だ困却致候新聞電報欄にて承知致候が此同盟の後本国にては非常に騒ぎ居候よし斯の如き事に騒ぎ候は恰も貧人が富家と縁組を取結びたる喜しの余り鐘太鼓を叩きて村中かけ廻る様なものにも候はん
(明治35年(1902)3月15日 中根重一宛て書簡)
(『漱石全集』 第22巻)


参考文献



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