東北大学附属図書館 夏目漱石ライブラリ


■2月1日


 其許〔そこもと〕の手紙にはそれやこれやにて音信を忘たり云々とあれど「それやこれや」とは何の言訳やら頓と合点不参候(中略)多忙其他にて音信を繁くする事出来ずば何故始めより断はり置かざるや左すれば此方にても心配なく一年でも二年でも安心して過すべきに、去りとては余り愚かなる事なりよく考へよく思ふて口をきくべし又事をなすべし以来ちと気をつけるがよろしい
(明治35年2月2日(日) 夏目鏡あて書簡)
(『漱石全集』 第22巻)


※明治35年(1902)、漱石34歳。英国に留学中だった。



 さうなると此方も、これでもあれやこれやで中々手紙が書けない、さういう貴方だつてあんまり此の頃では書いて下さらないぢやありませんかなどと言つてやつたものです、すると夏目の返事が振るつて居ります。おれは勉強に来て忙しいのだから、さう/\手紙も書けないと、ちやんと最初から断わつてあるぢやないか。お前は断りなしに手紙をよこさない。断わつて書かないのと、断わらずに書かないのとは大変な違ひだ。それに「あれやこれや」とは一体何のことだ。一々あれやこれやを列挙して御覧なさいと、かうなんです。そこで私も考へまして、手紙といつてさうさう書けるものぢやなしと、そこで思ひついたのが「筆の日記」です。
(夏目鏡子・述、松岡譲・筆録『漱石の思ひ出』)


参考文献


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