東北大学附属図書館 夏目漱石ライブラリ


■12月9日


そのうちで二番目の娘は長女と同じく女子大学の附属女学校に行つてゐるのですが、学校へは出たものゝどうしても気が気でなくて落ちついて教室に居られないと言つて早くかえつて参りました。そこでその子と近所の小学校へ行つてる四番目の娘とがまづ会ひに行きました。するとあんまり面変りがして居るので悲しくなつたものでせう。愛子といふその四番目の娘が堪らなくなつて泣き出しました。でも私がこんなところで泣くんぢやないとなだめますと、それが聞えたと見えて、目をつぶつたまゝ、
「いいよ/\、泣いてもいゝよ」
 と申しました。
(夏目鏡子述・松岡譲筆録 『漱石の思ひ出』 「六一 臨終」)


※解説: 漱石は大正5年(1916)11月22日、『明暗』執筆にとりかかろうとするが、病臥する。11月28日には胃部に内出血があり、一時人事不省に陥る。その後安静の状態が続くが、12月9日午後6時45分に永眠した。12月9日は「漱石忌」と呼ばれる。
参考文献



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