東北大学附属図書館 夏目漱石ライブラリ


■11月6日


 却説あの小説にはちつとも私はありません。僕の無私といふ意味は六づかしいのでも何でもありません。たゞ態度に無理がないのです。だから好い小説はみんな無私です。完璧に私があつたら大変です。自家撲滅です。だから無私といふ字に拘泥する必要は全くないのです。
(大正5年11月6日 小宮豊隆宛書簡)
(『漱石全集』 第24巻)


※解説: 小宮豊隆はドイツ文学者、評論家。東北大学教授・東京音楽学校長などを務めた。「あの小説」とは、大正5年5月26日から『東京朝日新聞』に連載していた『明暗』を指していると思われる。
参考文献



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