東北大学附属図書館 夏目漱石ライブラリ


■11月2日


 墓地の区切り目に、大きな銀杏が一本空を隠すやうに立つてゐた。其下へ来た時、先生は高い梢を見上げて、「もう少しすると、綺麗ですよ。此木がすつかり黄葉して、こゝいらの地面は金色の落葉で埋まるやうになります」と云つた。
(『心 先生の遺書』五)
(『漱石全集』 第八巻)


※解説: 『心』は大正3年4月20日から8月11日まで『東京朝日新聞』に掲載された。単行本にあたっては、「上 先生と私」、「中 両親と私」、「下 先生と遺書」の3章に分けられた。引用は、雑司が谷の墓地で「先生」が「私」に語る言葉。
※作品を読む: 『こゝろ』
参考文献



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