東北大学附属図書館 夏目漱石ライブラリ


■10月6日


 部屋のなかは少し暗くなつて、前の時より見にくゝなつたから、とう/\椽鼻へ出て腰をかけながら鄭寧に拝見した。すると初秋の風が芭蕉の葉を動かして、素肌に吹きつけた帰りに、読みかけた手紙を庭の方へなびかしたから、仕舞ぎはには四尺あまりの半切れがさらり/\と鳴つて、手を放すと、向こふの生垣迄飛んで行さうだ。
(「坊っちやん」)
(『漱石全集』 第2巻)


※解説: 「坊っちやん」は、『ホトトギス』(明治39年4月)に一挙掲載され、『鶉籠』(春陽堂、明治40年1月)に収められた。引用は、四国の中学校に赴任した坊っちゃんのもとに、下女の清からの手紙がやっと届いた場面。坊っちゃんは清からの手紙を心待ちにしていた。
※作品を読む: 「坊っちやん」
参考文献



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