東北大学附属図書館 夏目漱石ライブラリ


■10月17日


○病院でも朝五時頃になると大〔太〕鼓の声が聞える。始めて聞いた時は恍惚のうちに修善寺に居た様な心持がした。
 過ぎし秋を夢みよと打ち覚めよとうつ
(明治43年(1910)10月17日(月) 日記)
(『漱石全集』 第20巻)


※解説: 漱石は明治43年5月頃から胃の不調を訴え、長与胃腸病院で診察を受けた結果、胃潰瘍の疑いありと診断された。当病院に6月中旬から7月下旬まで入院し、8月6日には門下生・松根東洋城の誘いにより、静岡県伊豆修善寺温泉に療養のため出かけた。しかし修善寺温泉に到着後すぐに体調不良を訴え、病の床に就くことになり、8月24日の晩には大量の吐血をし、一時危篤状態に陥った。いわゆる「修善寺の大患」である。漱石は、10月10日まで修善寺に滞在し、帰京後は再び長与胃腸病院に入院した。「思ひ出す事など」は、帰京後間もない明治43年10月29日から『朝日新聞』に連載された随筆である。引用は帰京後の日記から。
※「漱石文庫」関連資料: 修善寺の大患日記日記及断片 明治43年10月8日〜4年1月21日
参考文献



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