東北大学附属図書館 夏目漱石ライブラリ


■10月16日


 八つ橋。豆ねじ。塩煎餅を食ふ。椽の先は崖で谷の下に水が流れる。深い谷である。向こふは真蒼な杉や松ばかり上に秋の空が見える。遠い山が後ろの方で霞んでゐる。歩して栂尾に至り石水院を見せてもらふ。天井が妙な凹形の琴の台を裏返した様なもので拵らへてある。峠へ出て車で北野天満宮迄来る。松茸を担ふ人ばかりに逢ふ。
(明治42年(1909)10月16日(土) 日記)
(『漱石全集』 第20巻)


※解説: 漱石は大学予備門時代の友人・中村是公の招きで明治42年9月から10月にかけて満韓旅行を行った。是公は当時、南満州鉄道株式会社総裁の任にあった。漱石は帰京の途中、大阪、京都などに立ち寄った。
※「漱石文庫」関連資料: 満州旅行日記
参考文献



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